2020年を代表するビデオゲーム 10選電ファミ編集部による2020年のゲームシーン総括(2020年12月31日)|BIGLOBEニュース

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 「2020年のビデオゲーム」は──コロナ禍の巣ごもり需要で一部のゲーム企業は好調なセールスを示し、E3などの大型イベントが感染予防のためにオンライン化され、11月には1972年のオデッセイから数えて第9世代となる次世代機が発売された。

 日本漢字検定協会の「今年の漢字」第1位が「密」となった2020年だが、ある意味でビデオゲーム業界にとっても、話題に事欠かない“密な1年”だったと言えるだろう。

 この記事ではそんな話題に事欠かなかった今年を象徴するような語るべき“2020年を代表するビデオゲーム”を、普段からTwitterなどのSNS数値とにらめっこをし、その背景についてあーだこーだと話すファミニコゲーマーの編集部員および編集補助アシスタントが選定した。

 なぜこのゲームがBuzzったのか、このゲームが面白いと高く評価されたのか、あの問題が起きたのかなどなど、その背景について普段から語り尽くしている編集部員が解説していこう。

10選となっているが、勢いあまってそれ以上の作品を番外編として紹介しているのはご愛嬌だ。

 2020年もあと残りわずか、今年ビデオゲームで何があったのかを整理しておきたい方は、ぜひ年始年末に読んでみてほしい。


『龍が如く7』

●発売:2020年1月16日 ●開発・販売:セガ(龍が如くスタジオ)対応機種:PC、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X|S

 『龍が如く』シリーズはファミ通所属時代に記事担当を12年以上務めていたため、すべてのタイトルをプレイしている。また、ありがたいことに龍が如くスタジオの面々とも親交があり、いまでも連絡を取り合う間柄が続いている。少し昔話をさせてもらうと、『龍が如く5』発売を祝した打ち上げの場に参加させていただいた際、総合監督を務める名越さんにこう聞いたことがある。

 「以前、『龍が如く』はマスではないところをとりにいったタイトルだから『4』、『5』とシリーズが続くのは想像できない、とおっしゃっていましたよね? いま『5』が発売されて、あのころと心境は変わられましたか?」と。

 名越さんは少し考えたあと「これまでは「どう続けるのか」という悩みと戦ってきた。ただ、これだけのシリーズに育ってくれたことで「どう終わらせるか」を決める権利が生まれた。消えていくのではなく、終わらせられる。これはクリエイター冥利に尽きることだよね」と答えてくれた。このときの会話はいまでも鮮明に覚えている。

 次作となる『龍が如く6』で『龍が如く』シリーズはひとつの節目を迎えた。主人公、桐生一馬の物語が完結したのだ。シリーズファンは驚き、悲しみ、次作がどうなるのかに期待を膨らませた。

 前段が長くなったが、『龍が如く7』を語るうえで、名越さんをはじめとする龍が如くスタジオが約15年にわたって積み重ねてきたものを知ってもらう必要があると考え、記させてもらった。そして満を持して発売されたのが『龍が如く7』である。

 春日一番という新たな主人公。アクションゲームからRPGへのジャンル変更。『龍が如く』の新たな幕を開く本作だが、発売を迎えるまでは変化に対し、不安や不満を述べる意見が多かった。しかし、そのほとんどは見事に手のひらを返すことになる。『龍が如く7』の出来がすばらしかったからだ。

 筆者はあまり物語を褒めるタイプではない。ゲームシステムをどう活かしているのかも重要だが、根本的に物語に「いい」、「悪い」はなく、「合う」か「合わない」かだと考えるタイプだからだ。結論から述べると『龍が如く7』の物語はドンピシャに刺さった。
 桐生一真という完成されたキャラクターがこれまである意味で足枷になっていたのではと思ってしまうほど、大胆に、繊細で、それでいて突き抜けた人間ドラマが描かれている。

 シナリオの完成度の高さもあるが、声高に述べたいのが春日一番の声を務めた中谷一博の真に迫る演技だ。春日というキャラクターが持つ、優しさ、温かみ、バカらしさ、そして強さ。7作目にして新主人公となる春日一番がどんな人物なのか。何を大切にして、何を守り、何を許せないのか。それをシナリオだけではなく、演技で見せつけてくれた。
 シーンのひとつひとつから春日の人間性が伝わり、プレイしたほとんどの人が春日を好きになったのではないだろうか。新主人公のキャラ立てとして、これほどの仕事ぶりはない。「キャラクターに命を吹き込む」という言葉をひさしぶりに思い出す熱演だった。

 現代RPGの最先端バトルシステム、伊勢佐木異人町の作り込みの密度の高さなどなど、ゲーム部分についてはさまざまなところですでに語り尽くされていると思うので詳細は割愛したい。本稿で物語のことを中心に述べているのは、『龍が如く』が人間ドラマを根底に置いているシリーズだからだ。
 ゲームで人間ドラマを描く。これは1作目から変わっていない、シリーズが脈々と受け継いでいるテーマだ。人間ドラマが主軸にあるからこそ、俳優陣が毎作ゲスト出演してもぶれず、サブミッションに深みが出て、ミニゲームも本編を忘れてハマれて、終わったあとに誰かと語りたくなる。

 手塚治虫『火の鳥』のように、人間ドラマというテーマが根底にあることで、『龍が如く』は主人公が変わっても、ジャンルが変わっても、芯は決してぶれず、多くの人に愛され続けるだろう。『龍が如く7』をプレイして感じたのは、その確信だった。「シリーズ最高傑作のひとつ」と評される『龍が如く7』。その評価は決して間違っていないのだ。

文/豊田恵吾

『龍が如く7』 公式サイトはこちら

『ディズニー ツイステッドワンダーランド』

●配信:2020年3月18日 ●開発:f4samurai ●販売:アニプレックス ●対応機種:iOS、Android

『ディズニー ツイステッドワンダーランド』:読者にストレスをかけないよう配慮されたシナリオ

 『ディズニー ツイステッドワンダーランド』(以下、ツイステ)は、女性向けのスマホゲームという、メインストリームからは外れた作品だが、間違いなく2020年を代表するゲームのひとつに数えられるはずだ。

 ディズニーヴィランズ(悪役)をインスパイアした、現代的なキャラクター設定と魅力的な世界観が大いに人気を博した。男性向けIPで例えると、『東方Project』『艦隊これくしょん』『Fate/Grand Order』あたりと同じくらいに二次創作が盛り上がった、と言えば想像しやすいだろうか。

 ひさしぶりにちょっとびっくりするぐらい流行していたので、8月ごろにそれまでの『ツイステ』流行の軌跡をまとめた。pixivの小説ランキングはネット上での女性向け人気ジャンルを最も顕著に反映する場所のひとつなのだが、そこのトップ10をずっと独占し続けたり、単なるCMの告知ツイートが20万RT以上を記録していたりと、他に例を見ない流行り方をしていた。

 それ以降も『ツイステ』の勢いはとどまるところを知らない。新しいグッズやイベントの情報が出ればすぐに万単位のRT数で拡散されたり、ハロウィンイベントの情報が公開された生放送では、新カードが発表されるたびにキャラクター名がTwitterトレンドに載ったりしていた。

 どうして『ツイステ』はこんなにも人気になったのだろうか。『ツイステ』の魅力として、「シナリオの面白さ」は良く挙げられるポイントだ。ヴィランズが主役なだけに、王道から少しずらしたり、“毒”を感じさせたりする展開が特徴的(参考リンク:4Gamer)なのだが、そこについてもう少し踏み込んでみたい。

 『ツイステ』のシナリオを読んでいると、「キャラクターの魅力を誤解なく伝えること」に貪欲に取り組んでいるように感じられる。具体的に言うと、読者を苛立たせないようにする配慮、すなわちヘイトコントロールがとてつもなく上手い。

 例として挙げたいのが、「グリム」というキャラクターの存在だ。「グリム」は主人公の相棒なのだが、野心が強く気が短いというトラブルメーカーとしての側面を持っている。こういったキャラクターは、起伏のあるシナリオを展開するには必要不可欠な存在だが、読者からは「足を引っ張っている」と嫌われることも多い。
 作り手と受け手の間に生まれるアンビバレントな課題だが、『ツイステ』はこの問題を上手に回避している。グリムを「猫の姿をした魔獣」にしたのだ。猫ほど、“人間に迷惑をかけてもしょうがない”と思われている存在はほかにないだろう。この工夫によって、プレイヤーはグリムに対して苛立つよりも、彼の無邪気さを楽しむことができるようになっているのではないだろうか。

 『ツイステ』のシナリオには、あらゆる点でこういった「読者にストレスをかけないようにする配慮」が見られるのだ。もちろんシナリオ自体の面白さも大きいのだが、「これだけ工夫されているシナリオなら、熱狂的に愛されているのも頷けるな」と納得できるものに仕上がっている。

 『刀剣乱舞』『あんさんぶるスターズ!』『アイドリッシュセブン』などのビッグタイトルがいくつも出た2015年と比べると、近年の女性向けゲーム市場はレッドオーシャン化が進み、難しい状況になっていると言わざるを得ない。
 そんな中で現れた『ツイステ』の大ヒットは、「女性向けゲームアプリ、まだまだ行けるんじゃないか!?」と思わせてくれる、気持ちのいい流行り方だった。今後もこの勢いに乗って面白い作品が出てくれれば良いな、と願ってやまない。

文/甘色

『ディズニー ツイステッドワンダーランド』 公式サイトはこちら

『Half-Life: Alyx』

●発売:2020年3月20日 ●開発・販売:Valve対応機種:PC(VR)

(画像は『Half-Life: Alyx』公式サイトより)

 初めて初代『Half-Life』を遊んだとき、それまでのゲームにはない圧倒的な没入感に痺れた。まるでその世界に入り込んだかのような感覚・体験。ゲームってなんて凄いんだ! というのを、問答無用で感じさせてくれたのが、『Half-Life』という作品だったのである。

 続編となる『Half-Life 2』も、やはり“それまでにない”感覚を与えられたゲームだ。当時としては圧倒的な表現力を誇ったSource Engineをベースにした美しい3Dグラフィックスも凄かったが、それに加えて物理演算や高度な敵のAIなどによって、まさに「世界そのものをシミュレートしている」ような感覚を、初めて我々ゲーマーに見せつけてくれた作品だったように思う。

 そして、2020年3月に出た『Half-Life: Alyx』もまた、“これまでにない”凄まじいゲームである。VRという新しいプラットフォームで、ゲームがどう進化できるのか? その問いに真正面から答えた作品だと言えるかもしれない。

 本作の何がそんなに凄いのか? それは、これまでのゲームとは比較にならないくらいの「実在感」にある。具体的には、以下のようなところが凄く丁寧に作り込まれているわけだが……。

 ・その世界にあるものに「ちゃんと触れられる」
  ・さまざまなオブジェクトを実際に掴める
   ・さらにそれを投げたりもできる
   ・ペンを拾って壁などに落書きしたりも
 ・銃弾の装填を自分の手で行う必要がある

 などなど。こう書くだけだと、それの何が凄いの? と思うかもしれないが、グラフィックスや物理シミュレートがハイエンドであることを前提に、こうした部分を「ちゃんとVR上でやる」ことで、本当に「そこに世界がある」と、脳が錯覚させられてしまうような感覚があるのだ。

 これは、実際にゲームに触れてみてもらわないことには伝わりづらい部分なのだが、本作をプレイしていると、「ああ、VRの体験ってこういうことか!」と思えるレベルの、新しい体感が確かにある。

(画像は『Half-Life: Alyx』公式サイトより)

 また、本作をやってあらためて思うのが、我々がいかに「ゲーム的なお約束」に慣れてしまっているかということだ。ボタン押したら近くのアイテムがさっと取得できる、リロードボタンを押したら即リロードなどなど、昨今の3Dアクションゲームでは当たり前のアクションでも、それを「実際に手を動かしてやる」と、まったく違う体験になるのだということ、本作はまざまざと見せつけてくれる。

 美しいグラフィックスと快適なUIで遊ばせる、昨今の最先端の3Dアクションゲーム群が、いかに「いろいろな面白さを再現できていないか」「いろいろなものをスポイルしているか」ということに、本作を遊ぶとあらためて気づかされるのだ。
 VRというプラットフォームが、ただ視野が広い映像を映すだけのものではなく、どれほど我々に新しい体験・感覚を提示し得るものであるのかを、本作は、作品を通して雄弁に語っているわけだ。

 ゲームの世界に入り込めることを示した初代『Half-Life』。
 次に、その世界自体を高度にシミュレートしてみせた『Half-Life 2』。
 そして、その高度に再現された世界を、“実際に触われるもの”にしたことによって、「実在感」という新たな感覚を提示してみせた『Half-Life: Alyx』。

 ゲームの新たな地平線を指し示した作品として、本作がVRゲームにおける──いや、ゲーム史上におけるマスターピースのひとつになるだろうことは疑いない。

文/TAITAI

『Half-Life: Alyx』 公式サイトはこちら

『あつまれ どうぶつの森』

●発売:2020年3月20日 ●開発・販売:任天堂 ●対応機種:Nintendo Switch

(画像は『あつまれ どうぶつの森』 公式サイトより)

 『あつまれ どうぶつの森』のすごさを証明する数値は快挙にいとまがない。任天堂の2021年3月期第2四半期決算では世界累計販売本数が2604万と発表。国内でも発売から半年で562万本以上を販売し、シリーズタイトルでも歴代トップとなる売上を叩き出している。

 これだけの売上を記録しているのは、ゲーマーだけではなく、ふだんゲームを買わない層をしっかりと取り込んでいるからにほかならない。それを証明したのが、まさに我が家のケースだった。

 現在、我が家にはNintendo Switchが3台ある。そして『あつまれ どうぶつの森』のソフトも3本ある。もともとは自分用に1台所有していたのだが、『あつまれ どうぶつの森』が発売されて状況は一変した。
 ふたりの娘が『あつまれ どうぶつの森』を遊びたいと言い出したからだ。娘たちがそう主張したのにはわけがある。ゲームとしてのおもしろさはもちろんだが、新型コロナウイルス感染症対策として学校が臨時休校となったことが環境的要因として大きく影響していた。

 2020年3月当時、Nintendo Switchの入手は困難を極めた。さまざまなサイトで抽選に申し込み、その結果に一喜一憂しながら4月中になんとか2台のNintendo Switchを入手することができた。すべては『あつまれ どうぶつの森』を遊ぶために。ハードを牽引する。この言葉を具現化したようなタイトルだ。

 ゴールデンウイークから娘たちの本格的なプレイが始まった。驚いたのは大人がなにも啓蒙していないにもかかわらず、子どもたちはいつのまにか『あつまれ どうぶつの森』の情報を得ていたことだ。 

 「友だちが持っていた家具がかわいい」、「住人を厳選して招いた」、「1週間後に特別なイベントがある」。彼女たちはメディアで情報を入手するわけではない。ゲーム内の興味・関心を、フレンドとのゲーム内チャットで得ているのだ。なんと完成されたエコシステムだろうか。

 シリーズの核となる「コミュニケーション」を昇華させた『あつまれ どうぶつの森』。パスワードで気軽に島の訪問ができるようになり、マイデザインが共有できるようになったことでオンラインの敷居が下がり、世界中のプレイヤーが影響を受けられるようになっている。
 このような新機能にプラスして、外に家具を置けることや、どうぶつたちの行動がより豊かになったことも、『あつまれ どうぶつの森』によるコミュニケーションの幅をさらに広げている。

 ふだんゲームをやらない妻が、娘たちのはまりように感化されてプレイを始めたのはまた別の話だが、同じような光景が多くの家庭で巻き起こっていると考えると、2020年最大の話題作と述べるのに一切の反論はないだろう。

文/豊田恵吾

『あつまれ どうぶつの森』 公式サイトはこちら

『The Last of Us Part II』

●発売:2020年6月19日 ●開発:Naughty Dog ●販売:SIE ●対応機種:PS4

 「パックマン」がモンスターに噛み付き、「マリオ」がクリボーを踏んで撃退するようになってから、ビデオゲームはひとつの文脈を抱え続けている。見聞きして体験するだけでなく“攻略”するエンターテイメント作品であるがゆえに、多くのビデオゲームには「敵」が登場する。そして、その敵を排除するためにキャラクターたちが「暴力」を行使しているという事実だ。

 僕らは日常生活では人を傷つけず殺さないようにと教えられているのに、キャラクターを通じて銃を撃ちナイフを突き刺して、チープなスナック菓子でも食べるようにバイオレンスを楽しんでいる。筆者は今年発売された『DOOM Eternal』も大好きなので、そのことの良し悪しについて説教なんてするつもりはないが、ともかく現実世界の常識とゲームの世界のルールではそういった矛盾があり続けてきた。

 その暴力の矛盾はゲームクリエイターたちも感じてきたはずで、『METAL GEAR SOLID』『デス・ストランディング』の小島秀夫監督はそうだし、『moon』の木村祥朗さんとオニオンゲームズ、『Undertale』のトビー・フォックスさんもそうだろう。

 これらのクリエイターたちは、プレイヤーたちが敵を排除するために振るう当たり前の暴力をモチーフにし、問う意味を込めてその矛盾を、さまざまなゲームシステムや世界設定に巧みに落とし込んでいる。非致死性の武器やアクションを取り入れたり、モンスターを狩る勇者をべつの視点から見てみたりするのもそうだし、あるいは敵と友だちになることで暴力を振るわないゲームデザインもそうだ。

 2020年に発売された『The Last of Us Part II』は、そういった作品と比較すると異例のタイトルである。なんせ、暴力をゲームに落とし込むのではなく、いかに暴力をゲームの上でリアルに描いてプレイヤーに突きつけるかにフォーカスしているからだ。

 カットシーンではエリーの顔が信じられないほど苦渋にあふれ、心臓の鼓動のSEがフルスロットルとなり不安を煽る。バタフライナイフで敵の肉が抉れる音と、悲痛な叫び声が聞こえる。さっき殺した敵の血がベットリと床と壁に広がっている。殺した犬の名前なんて聞きたくなかった。撃ち抜いた頭は割ったスイカのように砕け、爆発で四肢は四方八方へ吹き飛ぶ(これは海外版だけの表現だが)。流血、死体、拷問、射殺、撲殺、爆殺。なんて悪趣味なゲームなんだ!

 これらが極上のグラッフィクスとアニメーション、狂気の作り込みで確立されていく。正直なところ、YouTubeじゃなくてLiveleakに載る類のやつ。暴力の連鎖はつぎからつぎへと続き、あまりにも陰湿かつねばっこく描かれるもんだから、プレイしていてたまらない気持ちになる暴力ゲームNo.1である。これが『ソナチネ』みたいな乾いた暴力だったら、どんなによかったことか。

 そしてNaughty Dogとディレクターのニール・ドラックマンは、ゲーム上で長大かつ緻密に記した暴力の連鎖の答えをプレイヤーに委ねることなく、「これが暴力の矛盾への答えだ」と最後に突きつけてくる。槍のひと突きのような鋭さ。そうして、「なぜエンディングはああなったの? 意味わからん」とか、「ゲームを楽しみたいだけなのに暴力を考えろとは? 知るか」とか、そういう疑問を抱かせる装置として、『The Last of Us Part II』は芸術的に完璧であり美しい装置なのである。

 暴力の連鎖を徹底的にリアルに体験させ矛盾への疑問を抱かせることが目的なのだ。これが人が楽しむ娯楽や、ためになる作品として成立しているかは、正直、人によるとしか言えない。受け入れられない人には、受け入れられない作品だし、それは正しい。ローンチ直後に本作への評価がさまざまな文脈にとらわれ、インターネット上で主義主張の棒となったり強く否定的な意見が悪目立ちしたのも、そういう構造から来ている部分もあるだろう。

 だが一言だけ言いたいのは、ゲームに真摯に向きあいエリーの物語を終えれば、納得にしろ嫌悪感にしろ何かしら心に去来するものがあるだろうということだ。無心でなければ、安っぽいポテトチップスでくだらなくお腹をふくらませたとき以上には“何か”は満ちる。『The Last of Us Part II』は、「ゲームにおける暴力の矛盾」を新たなレベルでモチーフにした作品として、2020年を代表するビデオゲームと言える。

文/ishigenn

『The Last of Us Part II』 公式サイトはこちら

『Ghost of Tsushima』

●発売:2020年7月17日 ●開発:Sucker Punch Productions ●販売:SIE ●対応機種:PS4

(画像は『Ghost of Tsushima』公式サイトより)

 「誉は浜で死にました」「お侍様の戦い方じゃない」などのパンチラインを生み出し、ネット上でも多くの話題を生んだ、Sucker Punch Productionsが送る和風オープンワールドRPG『ゴーストオブツシマ』

 “風”によってプレイヤーを誘導し、短歌や温泉スポット、動物たちを追いかけまわしながら美しい情景に能動的に関わることのできるサブ要素など、小回りの利いたデザイン性が大きな話題となった。

 また「世界ふしぎ発見」長崎県・対馬の特集が放送された際は『ゴーストオブツシマ』の映像が流れた上にナレーションを石川先生が務め、ゲーム好き以外へのインパクトも残しているはずだ。

 ステルス要素というシナリオと密接に関係する部分では賛否両論があったものの、一見硬派に見える境井仁やゆかいな仲間から垣間見えるほころびや愛嬌も功を奏し、日本だけではなく海外からも多くの支持を得た。

 本作の魅力を簡単に述べると「誉れ高き武士として育てられた仁の葛藤と矛盾」、「ハッキリとした目的を持った登場人物」、「高揚感と緊張感を得るこのができる刀での戦闘」、「テーマと密接に関係する冥人としての戦闘」、「広大で美しい自然と、それに能動的に関わりたくなる風や動物たちを利用したゲームデザイン」が上げられるだろう。とくに武士のカッコよさを安直に伝えるのではなく、真摯に武士の価値観と向き合ったストーリーが評価できる。

 マルチプレイモード「Legends」(冥人奇譚)の配信も盛り上がり、まだまだ遊べる作品となっているのでまだプレイしていない方はぜひ楽しんでいただきたい。

文/tnhr

『Ghost of Tsushima』 公式サイトはこちら

『Fall Guys: Ultimate Knockout』

●発売:2020年8月4日 ●開発:Mediatonic Limited ●販売:Devolver Digital ●対応機種:PC、PS4

(画像はFall Guys: Ultimate Knockoutより)

「プレイする際の腰の重さ」が圧倒的に低かった『Fall Guys』

 2020年の8月から9月にかけて、『Fall Guys: Ultimate Knockout』(以下、Fall Guys)の人気はすさまじいものだった。Steamでの最大同時接続数は発売から2週間経っても伸び続け、Steam版は売り上げ700万本を突破し、発売と同時にフリープレイに登場したこともあってか、PS PlusでのDL数は歴代1位を記録した。この規模感からは信じがたいが、インディーのバトロワゲームで、しかも基本無料ではなく買い切り型であることを考えると、とてつもない快挙だと言えよう。

 リリース当初は「風雲たけし城ゲーム」という、伝わるのか伝わらないのかよくわからない触れ込みだった(事実、リリース前に開発のMediatonicが「たけし城にインスパイアされた」と言っていたのだ)のだが、あれよあれよという間に大流行に成長していた。
 開発チームのPR戦略が非常に巧みだったのも印象的だ。ポップでキュートなフォールガイの衝撃的な骨格図を公開したかと思えば、真相を巡って開発チームに亀裂! と称してカワイイ骨格図を出したり、チーターだけがマッチする「チーター島」を実装したりするなど、話題に事欠かなかった。

 どうしてこれほど流行ったのか。その理由のひとつとして、「圧倒的に敷居が低い」ということはまず挙げられるだろう。そもそも、バトルロイヤルというジャンルは「基本的には負ける」のでプレイの敷居は低いのだが、『Fall Guys』では「プレイする際の腰の重さ」がさらに軽くなっている。
 操作はほぼ覚える必要がないし、1ゲームも短い。エイム力も必要ないし、マップを覚える必要もない。ランダム性もそこそこ高いので、下手でも頑張っていれば生き残れたりする。

 そのため、既存のバトロワ系ゲームにあまり馴染めなかった筆者でも楽しんで遊ぶことができたし【※】、「このゲームならドン勝も狙えるんじゃないか……?」と思えたりもした。実際にはそこまでやり込めはしなかったのだが、『Fall Guys』には「自分でもできそう」と思わさせるものがあった。

※余談ながら、対戦型ゲームにおいて「楽しい」と「面白い」は異なる感情だ。こちらの記事では、『Fall Guys』を引き合いに出しつつ、その点が見事に分析されている。あわせてご参照いただきたい。

 当時、ネットでは右を見ても左を見ても『Fall Guys』が配信されており、こんなに誰も彼もがプレイするゲームがこの時代に現れうるものなのか、と驚いた記憶がある。しかし、10月に配信されたシーズン2以降、その勢いはぱたりと止んでしまった(少なくとも国内では)。

 その盛衰のスピードも含めて、まさしくバブル的な人気であったと思う。しかし、そのレベルまで話題になること自体が珍しく、そして困難なのだから、『Fall Guys』が2020年を代表するゲームのひとつであることは間違いないだろう。

 とはいえ、まさかこのレベルで流行るものがもうひとつ(『Among Us』)現れるとは思わなかったが……。2020年は魔境なのか。

文/実存

『Fall Guys』 公式サイトはこちら

『Among Us』

●発売:2018年6月15日 ●開発・販売:InnerSloth ●対応機種:iOS、Android、PC、Nintendo Switch、Xbox One、Xbox Series X|S

(画像は『Among Us』 公式サイトより)

 みなさんは、魅力的なゲームを見かけたときどうするだろうか。ゲームへの興味と腰の重さを天秤にかけ、ゲームへの興味が勝ったらゲームをダウンロードするだろう。しかしダウンロードしていざプレイしたはいいものの、初心者ゆえにゲームを楽しむところまでプレイできず、なんとなく辞めてしまう経験があるのではないだろうか。

 本項では、美麗なグラフィックも、議論に役立つボイスチャットもない、だけども新規プレイヤーの参入への障壁をうまく取り払い、2020年大きな話題となった『AmongUs』の魅力について触れていきたい。

 本作は、直感的に理解できるミニゲーム「タスク」と、4〜10人のプレイヤーの中に紛れ込んだ1〜3名の人狼をあぶり出す「議論」のふたつのセクションから成る人狼ゲームだ。

 Crewmate(村人)陣営の勝利条件はふたつ。宇宙船を修理するタスクを全て完了するか、議論によってImposterを全員追放することでCrewmate側の勝利となる。
 Imposter(人狼)陣営は、Crewmateを殺害してImposterと同人数にした時点で勝利となる。また、Crewmateへの妨害も可能。時間制限付きのタスク(メルトダウンや酸素濃度を減少させる)を発生させ、Crewmateが時間制限内にこのタスクをクリアできなかった場合もImposter陣営の勝利となる。

 動画サイトや配信サイトで大きな話題となったことで、2018年の発売から2年を経てプレイ人口が大幅に拡大した本作。プレイしたことがなくとも、動画や配信で見たことがあるという方も多いのではないだろうか。

(画像は『Among Us』 公式サイトより)

 まず本作には、人狼ゲームにおける「占い師」や「狂人」といった役職が存在しない。本作における役職は「Crewmate」と「Imposter」のふたつのみとなっている。複雑なことは考えずただ人狼をあぶり出せばよいので、プレイしてすぐに議論に参加することが可能だ。

 人狼ゲームの欠点である、追放されたらゲームに干渉することはできない点をカバーしているのも、新規プレイヤーには優しい点だろう。議論の末に追放されてしまった場合でも、Crewmateであればタスクを、Imposterであれば妨害が可能なので、ただゲームの終了を待つのではなくゲームに参加しながらゲームの行く末を見守ることができる。

 また、一度見たら忘れられない、キャッチーなビジュアルも魅力のひとつだ。マッチングルームにあるPCから、好きな色を選択したり、帽子を被せるなどCrewmateのカスタマイズも可能となっている。カスタマイズした自分のCrewmateがフィールド上を右往左往する様子はキュートで、プレイを重ねるごとに、より一層愛着が湧くことだろう。

 しかし本作では、通常の人狼ゲームと違って人狼による殺害がはっきり描かれる。緊張感のあるSEと共に、自分のCrewmateが銃で後頭部を撃たれたり、ナイフで何度も刺される様子がアニメーションで流れるのはショッキングなのだが、少しシュールで笑ってしまう。死体となったCrewmateは、体が半分に切断され骨が露出するが、これもなんだかポップな骨が1本だけ飛び出ているのだ。このあたりのキュートとシュールのバランス感も、ブームの一因だろう。

 新規プレイヤーの参入障壁を取り払いながらも、人狼ゲームのスリルはそのまま楽しめる『AmongUs』。PC版、スマートフォン版にくわえて12月16日(水)にNintendo Switch版もリリースされている。ダラダラしがちな年末年始にプレイして、ヒリつくスリルを味わおう。

文/anymo

『Among Us』 公式サイトはこちら


『天穂のサクナヒメ』

●発売:2020年11月10日 ●開発:えーでるわいす ●販売:マーベラス ●対応機種:PC、PS4、Nintendo Switch

(画像は『天穂のサクナヒメ』 公式サイトより)

 僕たちはビデオゲームという空間でどんな世界へも行けるし、どんなことだってできるはずなのに、「現実世界で起きていることを仮想世界で忠実にシミュレートする」という魔性の魅力に抗えない。世界(とくにドイツ)では狂ったようにシミュレーター型のゲームがリリースされ続け、地道に農業をやるだとか、PCをビルディングするだとか、家屋をリノベートして売るだとか、欧州でトラックを運転するだとかが再現されており、じつに多彩でよく思いつくものだなと思う。

 『天穂のサクナヒメ』は探索型の横スクロールアクションゲームではあるが、作中の「稲作シミュレーター」が強い注目を浴び話題をかっさらったことは間違いないだろう。プレイヤーは田畑をわざわざ起こし、種籾の選別から始め、苗を育てて、水田の管理をし、収穫したあとも脱穀といった作業工程が求められる。発売直後からTwitter上でそのリアルすぎる稲作が話題となり、「農林水産省公式HPが攻略wikiだ」とのパワーワードも生みだした。

 では『天穂のサクナヒメ』が「稲作という独自のテーマに着目した」から大成功したのかと聞かれれば、そう単純な話ではないだろう。『Goat Simulator』『ごく普通の鹿のゲーム DEEEER Simulator』といった特例は置いておいて、この世にはシミュレーターと名の付いた適当なゲームが多々発表されているが、『天穂のサクナヒメ』には別格の味わいがある。

 それはゲームの内外において、開発のえーでるわいすの「稲作とゲームに対する誠実さ」があふれているからにほかならない。もはやレッドオーシャンのインディーゲームにおいて、一点突破のアイディアをそのままぶつけたような作品は日々濁流のように左から右へと流れている。
 筆者はニュース班を担当する編集スタッフなので、くだらない設定の作品を「笑えるね」とライターと話しながら、仕事として一発屋のお笑い芸人をお茶の間に送り出すテレビディレクターのような気持ちで紹介することもある。だが『天穂のサクナヒメ』は、まるで農作商品の生産者表示を見たときのように、ちゃんと作られたゲームであることがわかる。

 注目を浴びた稲作にしても、自宅でわざわざキットを注文して米作りをしたり、図書館や農学の論文を調査したりとフィールドワークに長大な時間を掛けてきた。マーベラスの公式サイトやインタビューでその熱量は宣伝され、害虫や水位、肥料の設定など細部まで長い開発期間を投じて作り込まれた要素もSNS上で見事に拡散されていった。これは稲作という設定をアイディアで終わらせず、おそらく「ここまで作り込む必要があるのか?」と脳裏に浮かびながらもそのテーマを誠実に追求したえーでるわいすの姿勢がもたらしたものにほかならない。

 そしてプレイしていて何よりも嬉しいのは、『天穂のサクナヒメ』がビデオゲームとしてもしっかりと作り込まれた面白い作品だということだ。探索アクションパートは爽快な出来で手触りも心地よく、これが一発屋のゲームでないことは触ればすぐにわかる。そこに稲作を軸とした食事パートがステータスアップというゲーム要素として見事に繋がっており、稲作でのゲームプレイがゲームの面白さと直結している。

 しっかりと作り込まれた白ごはんは美味しいという、ごく当たり前だがじつは難しいことを成し遂げた『天穂のサクナヒメ』。5年以上の開発期間と多数の人たちが関わった本作が、50万本以上のセールスを記録し「2020年を代表する作品」となったことには、思わずほっこりしてしまう。

文/ishigenn

『天穂のサクナヒメ』 公式サイトはこちら

『サイバーパンク2077』

●発売:2020年12月10日 ●開発・販売:CD Projekt RED ●対応機種:PC、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X|S

バグや性器が悪目立ちするがオープンワールドRPGとしては特異点にあたる傑作『サイバーパンク2077』

 世界中のゲーマーが期待した『サイバーパンク2077』は、ある種の“サイバー問題児”として多くのユーザーの手元へと届けられた。

 バグやクラッシュが多発しハードによっては十分にプレイできず、返金騒ぎもあったため、マイナス面の話題が多くなってしまっているが、間違いなくオープンワールドRPGとして最高峰の物語体験を提供してくれる。

 とにかくシナリオ、ゲーム内を構成する要素、どの面から見ても本作のボリュームは度を超えている。メインストーリーのみをストイックに進めることができれば、常識的なプレイ時間に収まるのだが、もちろんナイトシティの誘惑はそんなことを許さない。

 50時間もプレイすれば全体のボリューム感はだいたい見えてくると踏んでいたのだが、本作はどこまで続くのか分からない……と語ったレビューからさらに数10時間プレイしている。いまだにナイトシティでの生活から離れることができない。サブクエストを進めていくと恋に暗殺に大忙しといった具合にてんてこ舞いだ。

 もちろん、細部まで情報がぎっちりと詰まったサイバーパンクの世界で、ひとりの住人としてミッションや生活をこなしていく体験の濃度が薄いわけではない(サブクエストの内容の濃密さが始まるまで一切分からないのは少し残念だが)。

 ゲームの舞台である2077年を“次世代”と呼んでいいのなら、『サイバーパンク2077』はまさに次世代に残すべきマスターピース、傑作と言ってよい完成度を誇るだろう。

 とにかくバグや性器に目が行ってしまうのは仕方のないことだが、シナリオやゲームプレイの真っ当な素晴らしさについても話題に上がるべきだ。また、CD Projekt REDが今後展開していくDLCにも注目していきたい。

文/tnhr

『サイバーパンク2077』 公式サイトはこちら

番外編:『ARK: Survival Evolved』

●発売:2017年8月29日 ●開発・販売:Studio Wildcard ●対応機種:PC、PS4、Xbox One、Nintendo Switch、iOS、Android、Stadia

(画像は『ARK: Survival Evolved』 公式サイトはこちらより)

Vtuberの大規模PvPにより再ブーム『ARK: Survival Evolved』

 ゲーム実況のおかげで再ブームが訪れたゲームはこの世に多く存在する。今年もっともそれが顕著だった作品は『Among Us』だと思われるが、日本のVtuber文化の盛り上がりを見ると『ARK: Survival Evolved』も外せない作品となるだろう。

 2015年に初めてリリースされた『ARK: Survival Evoled』は恐竜が住む島でのサバイバルをテーマにしたマルチプレイオンラインゲーム。にじさんじやホロライブという大型Vtuber事務所が各自でサーバーを設立し、その中で行われたライバー同士の掛け合いが大きく話題になった。

 くわしくは電ファミで以前執筆した「にじさんじARK戦争」の戦記をご覧になっていただきたい。

 ロールプレイにロールプレイを重ね、複雑化していく恐竜の世界。私は「ARKにじさんじサーバー」をもうひとつの「にじさんじ」としての世界を構築するための可能性だと感じた。

 そこでは、政治的なやりとりが行われて、もちろん戦争も発生してしまう。だが、そこに現れる社会的なリアリティは私たちファンを熱狂させ、さらにVtuberが次のステージへと進化していることを確信させたのであった。

 配信文化の多様化や、包括契約によって生まれた実況文化の法的整備が著しく進んだ2020年は、ゲーム実況の新しい可能性の幕開けだともいえ、『ARK: Survival Evolved』関連のゲーム実況はそれを象徴したコンテンツだとも言える。

 続編の開発やアニメの制作も発表されており、これからも恐竜サバイバルゲームからは目が離せないはずだ。

文/tnhr

『ARK: Survival Evolved』 公式サイトはこちら

番外編:『マルコと銀河竜』

●発売:2020年2月28日 ●開発:TOKYOTOON ●販売:TOKYOTOON、HOBIBOX ●対応機種:PC

(画像はマルコと銀河竜より)

1000枚超えのCGとトゥーン調アニメによって生み出される独特なグルーブ感が話題を呼んだ『マルコと銀河竜』

 次世代機が登場しスペックの上昇によって極まる美術表現がある一方、それとはまったく関係ないところでも“職人の技”は進化し続けている。

 TOKYOTOONの『ノラと皇女と野良猫ハート』シリーズのスタッフによる、全年齢向けアドベンチャーゲーム『マルコと銀河竜』は、長い美少女ゲームの歴史の中でも異色だと言わるほどの新鮮な体験をプレイヤーに提供した。

 百聞は一見にしかず。まずは、このOPムービーを観れば何が異様か一瞬で分かるであろう。

 本作の特徴は1000枚を超える圧倒的なCGの量、そしてめちゃくちゃ動くカートゥーン調のアニメーションだ。じっくり噛みしめて文章を読み進めていくというよりは、テンポよく軽やかにシナリオが進行していき、その作中のテンポの良さとギャグの連発、キャラクターの愛嬌がリンクし、物語が進行していく現象自体に強い快感を覚える。

 宇宙版『母を訪ねて三千里』とも表現されるシナリオ自体は、残念ながら描き切るができず、またテーマやキャラクターの掘り下げが甘いため不完全燃焼に陥ってしまう場合があるのだが、それを含めて「この手法のアドベンチャーゲームをこの世に放出したい」という気概を感じて評価ができる。

 また、途中に挿入される謎のミニゲームや、井澤詩織やファイルーズあいなどの豪華声優にも注目していただきたい。

 多くの美少女ゲーム制作会社が『マルコと銀河竜』に感化され、尖った手法を利用したゲームが生まれたら非常にうれしく思う(めちゃくちゃ大変だと思うが……)。

文/tnhr

『マルコと銀河竜』 公式サイトはこちら

番外編:『ファイナルファンタジーVII リメイク』

●発売:2020年3月20日 ●開発・販売:スクウェア・エニックス ●対応機種:PS4

(画像は『FINAL FANTASY VII REMAKE』 公式サイトより)

 なぜ2020年を代表する10選とならず番外編なのかと問われれば、連作のパート1である本作はミッドガルという全体の序盤にあたる部分であり、その物語がまだ今年で終わらず続いていく点が大きい。とはいえそこさえ除けば、『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、FF7R)は、1997年発売のゲームのリメイクとは信じられないほどエネルギッシュかつフレッシュな序章だったと言えるだろう。

 業界歴23年のベテランがファンの望む形で戻ってくるまでには、紆余曲折があった。多数のスピンオフや外伝が登場し世界設定に厚みがもたらされていく一方で、一番の願いである「現代の最高のビジュアルで『ファイナルファンタジーVII』を再現すること」は長きにわたり叶えられてこなかった。2014年12月には、PS4向けに原作『ファイナルファンタジーVII』の移植が発表されたが、そのアナウンスには大きな失望の声が寄せられた。いまさらこんな昔のゲームをそのまま出すのか。欧州スクウェア・エニックスのYouTubeチャンネルが投稿した動画では、当時の批判の痕跡をコメントとしていまも見ることができる。

 それから半年が経った2015年6月のE3、その映像は突如として公開された。海外のストリーマーたちが「『ファイナルファンタジーVII』!?」とか「映画じゃないよな!?」とか半信半疑で叫ぶ中、最後に本作がリメイク版だともったいぶって伝えられた。地球はほんの少し、世界各地のファンの喜びの声で震えたかもしれない。

 同年12月にはリメイク版が分作であり、さらにのちにはフルプライスであることもあってか、発売までインターネット上では文句を言うユーザーも見られた(いまだにリメイク版はパートいくつまで続くかも決まっていないので、わからないでもない)。だがそういった事実など関係ないように、本作が発売から500万本セールスを全世界で達成し高い評価を受けたという事実については、よく考えなければならない。

 あらためて言うまでもないが、原作の『ファイナルファンタジーVII』はゲーム史上に残るマイルストーンとなっている。PlayStationというハードウェアの転換期に登場し当時の3Dグラフィックスの最先方を突き進んだ同作は、従来の伝統的な大型ファンタジーRPGではあまり見られない要素でいっぱいだった。むせ返りそうなスチームパンクの都市、無口でクールな主人公、神羅カンパニーという企業が世界を牛耳る斬新な構図。その作品自体の出来以上に、さまざまな要素が絡み合い特異点になった、記念碑のごとき作品と言っても差し支えない。

 23年後、それをリメイク作品で、現代の最高のグラフィックスとゲームシステムで描く。だから、すばらしい作品になるのは当たり前じゃないかと思える。だがおそらく、「改善ではなく拡張」という方向性をもって作られたことこそが、本作の肝であるのではないだろうか。
 戦闘システムが現代向けにスタイリッシュに変わったとかいった単純な話ではない。ミッドガルの一部一部を繊細に描くという行為は、ただ当時の開発資料に沿ってテクスチャやモデルを新しく作るだけでなく、それに見合った世界の演出や描き方を用意する必要がある。ただ一部を単純にリファインするだけでは、23年前のゲームのどこかとギャップが発生するだろう。

 それはまるで積み上げられたジェンガを組み直すがごとしだ。本作は、想像するだけで吐き気をもよおしてしまいそうな拡張を積み上げ高みを目指しつつも、『ファイナルファンタジーVII』の全体像というタワーはけっして崩さない見事な手腕で、序章の世界を描ききっている。スクウェア・エニックスがリメイク版をなかなか発表しなかったのも、なんとなく理解できてしまうところだ。しかしこれこそがファンが求めていた、当時の熱量をそのまま現代でも味わうことができる『FF7R』である。

 筆者はゲームが発売されてからしばらく経って本作をプレイしたが、しっかりとプレイしていた人々の感想に、いまなら相槌を打つ。クラウドなどのキャラクターやミッドガルの町並み、またストーリーすらも、懐かしいにも関わらずどこか新鮮で、当時思いもしなかった側面を見せてくれる。リメイク(創り変える)という意味を本当に体現した『FF7R』は、その行き着く先で何を提示してくれるのか。まだ旅路は終わっておらず、この偉業が完成するのかどうかには期待と不安が入り交じる。

文/ishigenn

『FINAL FANTASY VII REMAKE』

番外編:『Helltaker』

●発売:2020年5月11日 ●開発・販売:Vanripper ●対応機種:PC

(画像はSteam『Helltaker』より)
(画像はSteam『Helltaker』より)

 2020年5月、PCゲーム配信プラットフォームのSteamに突如現れヒットした作品『Helltaker』(ヘルテイカー)をご存知だろうか。本作は、赤と黒の2色を基調にカートゥーン調で表現された悪魔っ娘のキャラクターたちが登場する短編パズルゲームだ。

 ゲームシステム自体は「指定された手数でキャラクターを悪魔っ娘の元へ移動させる」シンプルなものでありながら、執筆時点のSteamストアページでは8万4000件以上のレビュー投稿があり、そのうち98%のユーザーから好評価を受けている。

 ポーランド出身の製作者VanRipperことウカシュ・ピスコシュ氏は、本作のリリース以前から海外アートコミュニティサイトDeviantArtとYouTubeチャンネルでイラストや自主制作アニメを公開している。

 『Helltaker』のヒットには「SNS上でのファンアート拡散」が大きく影響しているが、その起点にはコアなゲームファンだけでなく、旧来からの氏のファンも関わっているようだ。

VanRipper氏がインスピレーションを得た恋愛シミュレーションゲーム『Monster Prom』へ登場するヒロインのひとり「The Slayer」
(画像はmonsterProm by VanRipper on DeviantArtより)

 また、本作がヒットした要因には、海外インディーゲームの日本語翻訳を手がける陽炎01型氏の打診「有志翻訳ガイドライン」早期に整備された点も挙げられる。

 英語圏外のプレイヤー、特にSteamで3番目にユーザー数の多いアジア圏のユーザーが母国語で物語を楽しめることはヒットにおいて非常に重要な要素であった。

 2020年の「Steamアワード」では「ベストサウンドトラック賞」にもノミネートされ、アーティストのMittsies氏による音楽の評価も高い『Helltaker』。
 
 しかし、ゲーマーが作品を選ぶうえでの“入口”として、筆者は上記ふたつが大きな要因になっていると考える。
 本作に興味があれば、ぜひ日本語で遊び、ファンアートや音楽を楽しんでほしい。

文/ヨシムネ

Steam 『Helltaker』 公式サイトはこちら

番外編:『クラフトピア』

●発売:2020年9月4日(早期アクセス) ●開発・販売:ポケットペア ●対応機種:PC

(画像は『クラフトピア』 公式サイトより)

 2020年を混沌の年だとするのなら、『クラフトピア』はある意味で2020年を代表する作品に選ばれてもいいだろう。2020年9月にリリースされた同作は、日本国産としてはめずらしいオープンワールド型のクラフトゲームで、しかも早期アクセス販売でありながらSteamで一次売り上げランキング1位に君臨。12月に入ると50万本を売り上げるという大きな成功を収めた。

 ポケットペアいわく「クラフト農業ハクスラ⾃動化建築マルチ対応オープンワールドサバイバルアクション」なるジャンルで、開発陣が好きこのむ要素をこれでもかと積み込んだのが同作となる。ハック&スラッシュとサバイバル、クラフトが軸のゲームは世界中に存在するが、さらにそこ「農業」、「⾃動化」、「ペット飼育」、「ダンジョン探索」、「建築」などなど、ここまで多種多様な要素を詰め込んでいるのはめずらしいだろう。さらにマルチプレイもあるし、スキルツリーも用意されている。

 一見すると混沌としており、まるでキメラのような作品に見えるだろう。グラフィックスは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のテイストを感じるし、ペットのテイムは『ポケットモンスター』、建築や自動化は『フォートナイト』を参考にしたように思える。開発者もそれは認めており、Steamストアの解説文では本作のコンセプトは明確に示されている。

私達が人生で遊んできた最高のゲーム達を、すべて組み合わせたら、一体どうなるんだろう…?
本当にリスペクトしてやまない、偉大な素晴らしいゲーム達を。そう、例えば…
サンドボックスのように木や石を掘り、
オープンワールドのように広大な世界を冒険し、
サバイバルゲームのように飢えと戦い、
牧場系ゲームのように畑を耕し作物を育て、
ハクスラのようにダンジョンに潜りレア武器を集めて、
工場シミュレーションのようにすべての作業を自動化し、
ハンティングアクションのように巨大生物を狩り、
ファンタジーRPGのように魔法を唱える。
そんなゲーム、作れるはずがない。スローライフな牧場系ゲームと、殺伐としたハクスラ、そして自由度の高いクラフトゲームが、共存するはずがない。そう思いながらも、数々の困難を乗り越え、何度も絶望を味わいながら開発を続けた結果生まれた、私達の理想郷。

(文章はSteamストア 『ク

 『クラフトピア』はもちろん、前作の『Overdungeon』を見ても、ポケットペアというインディー開発スタジオはとてもユニークだなと思う。ユニークなアイディアや世界設定で市場を一点突破するというインディーゲームの魅力は、これまで数多の作品でストーリーやドラマとして語られてきており、「インディー=個性」という考え方は良し悪しはべつとして根強い。にも関わらず、同スタジオはオリジナルにはこだわっておらず、いくつかのビデオゲームの要素を精査しそれらを組み合わせて新しい作品を作り出すということを明確に念頭において両作で挑戦している。

 それはどこか大手企業がビジネスのために人気作を模倣するような行為に見えることもあるかもしれない。ただ、ポケットペアが明確に違うのは、掛け合わせる作品をどれも単純に「好きだから」とか「すごいから」とか思っているのだろうということだ。とにかく、そういった作品を組み合わせるとどうなるのと、実験を続けているようなのだ。

 当たり前の話だが、素晴らしい作品と素晴らしい作品をかけ合わせれば、より素晴らしい作品が簡単に生まれるわけではない。そこでは掛け合わせたことで多数のズレや誤作動が生じるし、いちいちい微調整が求められるだろうし、そもそもゲームとして成り立たないことの方が多いだろう。だから、ジャンルやシリーズ続編といったより大きな区分で一からゲームを作る工程とは別種の難しさがある。

 インタビュー記事を読むと、アセットを流用するといったコスト軽減策など、合理的な思考を持っていることは明白だ。なのだが、それよりもむしろ、開発陣には「これとこれを混ぜたら楽しいんじゃね?」というプリミティブな興味心があり、実際の開発で必死にそれを制御しようとしているように見える。そこには日本のインディーゲームにはおそらくあまりない、『Overdungeon』や『クラフトピア』の特異さがある。

 奇しくも『クラフトピア』は発売後、そのあまりに行き過ぎた興味心のためか要素を盛り込み過ぎ、開発者すら予期しない動作や挙動が発生し続け混沌の様相を見せた。だが、そういうった問題もTwitter上でファンとの楽しいやり取りにしてしまっている。そこにはプロモーションの効果を考えての打算もあるだろうが、同時に本人たちが本当に楽しんでいるような感覚も受ける。はたして『クラフトピア』が混沌を脱ぎ捨てて完成したとき、どのようなビデオゲームとなるのかは見えてこないが、本作が2020年に発売されたという事実は頭に留めておいてよいだろう。

文/ishigenn

Steam 『クラフトピア』 ストアページはこちら


 以上、電ファミニコゲーマーが選出した「2020年を代表するビデオゲーム 10選」となる。こうやって見ると、2020年も意外とさまざまな作品がゲーマーたちの注目を集めてきたと思えるだろう。

 2021年も編集部は昔のビデオゲームばかりでなく、最新のタイトルを追いかけ「なぜ面白いのか?」、「どうして話題になっているのか?」という背景を解き明かしていく予定だ。ぜひ来年以降も、電ファミニコゲーマーの公開する記事にご期待いただきたい。

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