【月間総括】生活の一部に溶け込み,当たり前になるゲーム専用機 –

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 今月はソニーグループと任天堂の決算について話したいが,それよりも先に「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」について触れたい。米国で興行収入トップ,さらに2020年公開作品として全世界でもトップとなった。アニメ映画が日本で高い成果を上げたことはあったが,すそ野が広がっていることを示す出来事だろう。

 また,ロサンゼルスのLRT(ライトレールトランジット:郊外では専用軌道も走る次世代型路面電車)に鬼滅の刃のラッピングカーが登場した。ロサンゼルスにこのようなラッピングカー登場したのは個人的には驚きである。
 米国では,日本のアニメは特定の愛好家向けのイメージが強く,このような公共物に登場することはないと思っていたためだ。これが受け入れられたということは,米国でアニメを受け入れる雰囲気が,少なくとも西海岸では広がっているように思える。

 前回,「エース経済研究所が,2030年ごろまでに日本のアニメが世界を席巻すると予測している。これも長期的な嗜好の変化や,世代交代を考慮したものである。多くの人は,今の状況がずっと続くと考えがちだが,人々は活発に行動しており,どんどん変化していくものである。ソニーグループの孫会社アニプレックスが次第に世界で評価を上げていくと考えているのもこの予測に基づく」と述べたが,早くもその傾向が表れたことに驚いている。

 日本のアニメーションが受け入れられていく過程では軋轢も出てくると思うが,若い世代に「鬼滅の刃」のようなコンテンツが浸透しているのは,エース経済研究所の予想が,まったくの的外れではないと考えている。
 徐々に,しかし着実にアニメが世界に浸透していくだろう。

 さて,本題である決算の話を進めよう。ソニーのゲーム部門は,年度では大幅増収増益となった。PS5の売上(着荷)台数も,エース経済研究所の予想を上回る780万台だった。
 年度の業績で見た場合は,非常に好調だったと言って差し支えないが,いくつか気になる点がある。まず,第1四半期をピークに,利益水準が大幅に切り下がっている(下図参照)。

出典:ソニーグループ決算資料より エース経済研究所作成

 これは,PS5を逆ザヤで販売し,さらに空輸に多額のコストをかけたことで費用がかさんだためである。これ自体は,将来のソフトウェア販売につながるのでポジティブな評価もあろうが,アクティブユーザーが再度のロックダウンとなり家で過ごす時間が長かったにもかかわらず減少したのである。さらに,ソフト販売も前年同期比で減少した(下図参照)。

任天堂が,決算説明会の質疑応答で3月の「モンスターハンターライズ」効果もあり,アクティブユーザーが大幅に増えたとコメントしたのとは対照的である。

●プレイステーションのアクティブユーザー数,DL比率及び,フルプライスゲーム販売本数

出典:ソニーグループ決算資料より エース経済研究所作成

 ソニーグループは,2021年度第1四半期(4-6月)は,前年コロナ禍でロックダウンが実施され,巣ごもり消費がゲーム需要を押し上げた反動が出るとしている。その後は前年比プラスの好影響を想定しているようだ。

 なお,PS5は1480万台以上の販売を目指すとしているが,ヒアリングや説明会でのコメントを勘案すると大幅な上積みは難しいようである。PS5は7nmの先端ラインを使っているが,このプロセスは,ライバルのXbox Series Xを含め,多様なIT機器がこぞって使っているために,空きが乏しいのである。

 需要の実態はさておき,強い需要に対して増産できないのは,ゲーム市場が一部の愛好家向けの狭いもので,PS4発売時と比べて広がることを想定していなかったこともあるとエース経済研究所では考えている。
 この点ついては任天堂の項目でのちほど触れる。

 次に,任天堂の決算だが,Switchの販売は第4四半期も会社計画を大幅に上回る着地となった。資本市場では,前年の「あつまれ どうぶつの森」の反動で減収減益を予想する向きもあったように思うので,第4四半期だけでも,大幅増収増益となったのはサプライズだったのではないだろうか。
 エース経済研究所では,ハード販売の勢いがソフト販売の動向を決めているという立場なので,この結果に違和感はないが,ソフトがハードをけん引しているとすると,大型ソフトが期末のモンスターハンターライズだけで,前年のどうぶつの森より出荷本数が少なったことを考えると,この状況を予想することは難しかったと思う。

任天堂決算資料よりエース経済研究所作成

 2021年度に関しては,減収減益の見通しだった。Switchの販売台数は前期実績の2883万台に対して2550万台,ソフトが同2億3088万本に対して1億9000万本とそれぞれ減少する計画になっている。
 任天堂側の説明では,コロナ禍でワクチン接種が進み,巣ごもり消費が落ち着くとの見立てなのだが,3月の米国販売は非常に好調で店頭にSwitchがない状況だそうである(関連資料)
 日本も,ファミ通のデータや実際の状況を見ていると,毎週一定数それも8万台以上と閑散期としてはかなり多い台数が入荷,販売されているようだが,それでも店頭に在庫がないことが多い。

 5年目に入り,2000万台目前(5/20現在)のハードとは思えない状況で,自身も20年以上ゲーム業界を見てきたが,通常であればハードサイクル後半といえる5年目でここまで強い需要を感じたことはない。ソフト販売も,少なくとも国内では今年に入り,Switchプラットフォームが,プレイステーションプラットフォーム(PS4とPS5)を圧倒している。
巣ごもりの影響にしては,世界で見ても,ソニーのソフト売上本数が落ち込む一方,任天堂は増やす方向に動いており,これまでの考え方では,この状況を説明するのが難しくなっている。

 となると,これまで国内では大体2000〜2500万台だった普及限界が,DS並みの3000万台クラスに増えたと考えるのが妥当に思う。
 任天堂自身も,自社の宣伝よりSNSでの動画配信のほうが広告として上手になっているのではないかとコメントしているぐらいなので,コロナ禍で家庭中心のライフスタイルに変化し,特にSwitchがこの新しいライフスタイルにうまく適応していることが大きいと考えている。

 そして,先ほども述べたように今期のSwitchの販売(着荷)台数予想は2550万台としている。この水準は,PS4のピーク2000万台を上回っており,携帯性があることを考えても,やはり市場が広がった効果によるものと推測してもよさそうである。

 しかも,任天堂側はこれ以上増産できないとも言っていない。半導体不足といわれる中でも,かなりの規模で生産できる点は強みと言っていいだろう。以前から指摘しているが,世の中にあまねく普及するにはたくさん作れることがとても大事である。

 今期の2550万台は,PS5の1480万台以上からすると1000万台以上多い数である。最終的な普及台数は,PS4を大きく上回り,PS5に対しても上回る可能性が高いように思う。
 ゲーム機はマニア向けの高性能でそれなりの普及を狙うアイテムだったが,生活の一部で必需品に近いものに向かうとエース経済研究所では考えている。最終的な普及台数は,今後は据え置き機で1.5億台,携帯機能も含むなら2億台を前提にしたサプライチェーン構築が必要になるだろう。