東京五輪 NHK世論調査の衝撃~「諦め」と「誘導」で開催派が急伸!?~(鈴木祐司) – 個人 –

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東京オリンピックの開会式まで1か月余り。

G7首脳宣言に東京オリパラ支持が盛り込まれ、菅首相が「感染症対策を徹底して安全安心のオリンピックを行う」として、開催準備が着々と進められている。

いっぽう組織委員会の説明不足もあり、感染症の拡大を懸念する反対や延期の意見も根強い

6月7日の読売新聞朝刊は「五輪『開催』50%『中止』48%」という見出しが一面だった。

6月5~6日のJNN世論調査は、「中止」31%と「延期」24%で過半となった。そして観客数ごとの3択を合計した「開催」は44%と過半数に達しなかった。

果たして国民の本当の意見は、どこにあるのか?

NHK世論調査の3つの疑問

こうした中、6月11~13日に行われたNHK世論調査の結果は以下の通り。

「これまでと同様に行う」3%

「観客の数を制限して行う」32%

「無観客で行う」29%

「中止する」31%

「開催」が3択合わせて64%で「中止」の2倍を超えた

しかもNHKの世論調査では、ほぼ同じ時期に調査した他のメディアと比べて、「開催」支持が群を抜く高さとなった。摩訶不思議な現象と言わざるを得ない。

実はこの調査には3つの疑問がある。

まず東京オリンピック・パラリンピックについてのNHKの世論調査では、「延期」の選択肢が無い。今年1月の調査までは、「開催」「中止」「さらに延期」の3択で答えてもらっていた。しかし2月の調査では、回答の選択肢が変えられていた

「開催」を「これまでと同様に行う」「観客の数を制限して行う」「無観客で行う」の3つに分類した。そして「開催」以外では、「延期」を削除して「中止」だけにした。

「開催を支持する数が大きくなるような誘導」「これでは世論調査ではなく世論操作」などの批判が出たくらいだ。

2番目は、選択肢の前提となる質問文の問題だ。

やはり今年1月までは「東京オリンピック・パラリンピックの開催についてどう思いますか」と単純に聞いていた。しかし2月調査では、質問に「IOC=国際オリンピック委員会などは、開催を前提に準備を進めています」との言葉を入れた。

「開催が前提」との意図をにじませた異例の世論調査に見える。やはり誘導尋問の匂いがする。

3番目は、5月調査以降行われた変更

「開催の是非」ではなく、「開催を前提に適正な観客数」を問うことが目的のような調査に変更されたように見える。

正確には「東京オリンピック・パラリンピックの観客の数について、IOC=国際オリンピック委員会などは、来月判断することになりました。あなたは、どのような形で開催すべきだと思いますか」と5月調査で書き換えられ、そして6月調査では、「来月判断」が「今月判断」に置き換わった。

NHKの発信には、紛らわしさ・いかがわしさも付きまとう。

今回の世論調査での文言は、「あなたは、どのような形で開催すべきだと思いますか」となっていた。ところがWEBでは、「東京五輪・パラ 観客をどうすべきか」のタイトルがついている。いっぽうテレビは、『ニュース7』『ニュースウオッチ9』の映像に、「東京五輪・パラ」とだけつけ、もっと幅広な設問のイメージにしてある。

「観客数をどうするか」と聞いておきながら、「開催」支持が多い印象を作っているように見える。これは曖昧な聞き方をして都合の良い結論を引き出す、「曖昧戦術」を使った「魔法」と言わざるを得ない。

世論調査結果の矛盾

NHK世論調査は以上のように、選択肢から「延期」を外し、開催の選択肢を増やした。

次に質問文を開催前提に書き換え、さらに直近2回では五輪の観客数についての調査のような質問を行い、テレビでは五輪開催についての調査結果ととれるような放送をしている。

やはり五輪開催の是非と、開催の場合の観客数を一緒に聞くことに無理がある。

まず開催の是非を問い、「開催」と答えた人に観客数を再質問するのが自然だろう。

しかも質問に「誘導」ととれる表現を盛り込ませるのはイエローカードというより、もはやレッドカードだ。

この結果、調査の回答者の中には、誘導による混乱で「開催派」になった人もいるのではないか。いうなれば「誘導開催派」だ。

いっぽうで感染症拡大への不安、菅首相や組織委員会の実感を得られない説明への納得感のなさ、それにIOC首脳発言への反発などが少なからずあるにもかかわらず、開催準備がどんどん既成事実として進んだ結果、「諦め開催派」というべき人々が生まれているのではないか。

このことを裏付けるのが、今回のNHK世論調査のもう1つ興味深い設問だ。

東京オリパラの開催意義や感染症対策についての政府や組織委員会の説明に対して、どの程度納得しているかを聞いている。

ここでは「大いに納得」「ある程度納得」は合わせても25%にしかならない。

「あまり納得せず」「まったく納得せず」合計で68%だ。ひとつ前の質問での「開催派」は64%だった。この64%から「納得」の25%を引いた39%は、明らかに「納得していない」のに「開催」と答えた人たちだ。

「諦め開催派」と言えよう。

NHKは公共放送の筋を通せるか?

実はNHKの調査研究は、国内放送・国際放送と並ぶ公共放送の柱の1つと放送法は規定している。

しかも放送法第81条には、「協会は、公衆の要望を知るため、定期的に、科学的な世論調査を行い、かつ、その結果を公表しなければならない」と定めている。

筆者の知る限りNHKの世論調査は、科学性と合理性において国内で高い信頼性を保持してきた。

ところが今回の一連の五輪関連は、「科学性と合理性」の点で正々堂々と胸を張れるだろうか。「誘導と印象操作」の意図の下、世論調査のタブーを犯していないだろうか。

その前提に、NHK経営陣の政治権力への忖度が存在しないだろうか。

東京オリパラは感染症対策と並ぶ政治課題であり、菅政権の命運を左右するともいわれている。

その東京オリパラについて、NHKは番組やニュースで政権への忖度が働いているのではと疑われる出来事が幾つかあった。

五輪聖火リレー中継での音声中断問題や、NHKスペシャルの延期問題などだ。

これらに加えて、守るべき最低ラインを逸脱した世論調査を続けるなら、もはやNHKは菅政権への忖度を疑われるにとどまらず、「忖度でなく、もはや一体」と見られてもやむを得ない。

会長をはじめとするNHKの経営は、公共放送の筋を通す矜持を示せるのか。

その能力もなければ、そもそも意図もないとしたら、黙々と受信料を払い続ける視聴者は救われない。