【ACADEMY】クリエイティブディレクターになるには –

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GamesIndustry.biz ACADEMYでは,ゲーム開発において最も影響力のある役割の1つであるクリエイティブディレクターに就くためのアドバイスを紹介している。

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 仕事を見つけるのは簡単なことではない。我々のガイドは,あなたが夢見るゲーム業界の仕事への正しい道を見つけるために役立つだろう。このページでは,さまざまな専門分野をカバーした,ゲーム業界に就職するための他の詳細なガイドを読むことができる。

 クリエイティブディレクターは,おそらくビデオゲーム開発において最も憧れられる役割の1つだ。それはゲーム開発チームの顔であり,野心的なプロジェクトの構想から完成までの舵取りを任され,ビジョンを持つ人物である。

 確かに,クリエイティブディレクターに話を聞くと,そのビジョンが実現するのを見届けることは,デベロッパのキャリアの中で最もやりがいのある経験の1つであり,この仕事を続ける理由の1つでもあるようだ。

まだ完全に実装されていない良いアイデアと悪いアイデアの違いを見極める能力が必要です -Caroline Marchal氏,Interior Night

 Criterion GamesのクリエイティブディレクターであるKieran Crimmins氏は,「人に刺激を与えることに喜びを感じるなら,クリエイティブディレクションはあなたにぴったりの仕事です」と語る。「私は才能のある人たちが美しい新しいものを作るのを見るのが好きです。そういったことが増えれば増えるほど,それを実行する人も増えていきます。創造性が創造性を生み,気がつけばチームメンバー全員が,自分でも思いもよらないような仕事をしてあなたを喜ばせているでしょう。このようなプロジェクトの勢いは伝染し,幸福感をもたらします。私は朝はベッドから起きて,夜は寝るまでの時間を大切にしています」

 Sumo GroupのクリエイティブディレクターであるSean Millard氏は,「ゲームスタジオでの仕事は最高に楽しいものです」と語る。「私は100%そう思っています。ゲーム業界の優秀な人たちと交流し,仕事をして,ユニークな視点で人生を経験できます。これはゲーム開発における最高の役割だと思うのです。今でも単なる職業ではなく天職だと感じています。これは本当に稀なことで,とても特別なことです」

 Twin Drumsの創設者であり,クリエイティブディレクターであるAllan Cudicio氏は,クリエイティブディレクターはゲームの主なビジョンに責任を持つと同時に,常に他のアイデアを受け入れる必要があると付け加えている。「クリエイティブディレクターになるべきなのは,自分の作品に嫉妬したりせず,自分の家の前庭を公共の公園にして,自分の軽い監督のもと,近所の人たちが素晴らしい庭を作らせたいと思うような人です ―ちょっと詩的な表現になってしまったけど,分かりやすいでしょう」

クリエイティブディレクターの役割はどのようなものか?

 GamesIndustry.biz ACADEMYが取材したクリエイティブディレクターの全員が同意した,その役割をよく表す言葉がある。それは,プロジェクトやゲームのビジョンを設定し,その目標に向かってチーム全体が協力し合うことだ。

Interior Night,Caroline Marchal氏
【ACADEMY】クリエイティブディレクターになるには

 Interior Nightの創設者であり,CEO兼クリエイティブディレクターであるCaroline Marchal氏は,このプロセスを,役割を担う者が常に自問自答しなければならない一連の質問に分解した。

 まず,「どんな体験をさせたいのかです」「どのような体験を作り上げるのですか? なぜこれを作っているのですか,このゲームを作ることで世界の何を変えたいのですか。このゲームをプレイすることで,プレイヤーに何を考えてもらいたいですか? このゲームは誰のためのものですか? 家族,10代,女性など,どのような層に― そして,どんなタイプのゲーマー(または非ゲーマー)に向けたゲームですか? 。どのような行動に訴えようとしているのですか?」

 「そして最も重要なことは Xは何か? です。我々のゲームをユニークにするものは何ですか? 我々が作っているゲームを,チームやプレイヤーがワクワクするような1文にまとめるにはどうしたらいいですか?」

 ビジョンが定まったら,クリエイティブディレクターはそれをできるだけ早い段階で頻繁に伝え,チームを鼓舞し,仕事の指針とする必要がある。Marchal氏はその責任を,「自分の技術や規律を自分よりもよく理解している非常に才能のある人たちを,正しい方向に導くこと」と表現している。また,それはスタジオ内だけではない。

 「あなたの役割は,ビジョンを守ることでもあります」と彼女は語る。「チーム内はもちろん,外部のパートナー,たとえばゲームにパブリッシャがついている場合は,外部からのプッシュやプルが常にありますが,それは当然のことです。クリエイティブディレクターの役割の1つは,このような緊張関係からゲームとチームを守り,ゲームのビジョンが一貫して意味のあるものであることを保証することです」

クリエイティブディレクターは,自分でやることばかりではないので,信頼,傾聴,そしてチームワークがとても重要です

 日常的な役割としては,コミュニケーションの多くがミーティングで処理されていることが挙げられる。たくさんのミーティングだ。

 「ミーティングでは,人の話を聞いたり,プレゼンテーションをしたり,コラボレーションを促進したりすることに50%の時間を費やしています」とCrimmins氏は語る。「残りの50%は,プレゼンテーションやビデオ,ドキュメントなどの演出資料の作成です。私はソフトウェアに疎く,日々のビルドに変更を加えることができないので,それを補うためにハッカソンを開いて参加したりしています」

 Cudicio氏も同意見だが,ドキュメントの使用は「非常に過大評価されている」と考えている。「しっかりとしたクリエイティブディレクションがあれば,ドキュメントは比較的軽くて済み,特定の局面を担当するサブチームが多くのギャップを埋めることができます」

 Dontnod Entertainmentの「Tell Me Why」のクリエイティブディレクターであるFlorent Guillaume氏は,実際の開発チームに加えて,外部のステークホルダーとの明確なコミュニケーションの必要性を強調している。

 「ステークホルダーは,ゲームが彼らの期待に応えるものであることを確信する必要があります。それは,期待される販売数,品質,評判を達成することです」と氏は語る。「チーム,経営陣,そして常に最終的な目標であるプレイヤーとの間で,ときとして発散するまったく異なるニーズに気を配らなければならないのは,まるで三首龍のようです。結局のところ,あなたの仕事は,チームがプレイヤーにとって最高のゲームを作れるように導くことなのです」

Tell Me Whyは,Florent Guillaume氏のクリエイティブディレクターとしての最初のプロジェクトであり,10年以上にわたるAAAゲームの制作経験を生かして制作された
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 Millard氏は,クリエイティブディレクターの責務は会社によって異なると語る。氏は,開発部門,ビジネス開発部門,そして現在はグループ全体の責任者として,SumoのIPの開発に専念している。

 「どのような状況であっても,矛盾に満ちた役割です」と氏は語る。「謙虚なパイを食べることもあれば,拳を上げて勝ち誇ることもあります。勝った試合と同じくらい多くの試合に負け,身を粉にしてやり直す覚悟が必要です。創造的な赤ちゃんに自分の多くを投資しているので,準備ができていなければ,魂が破壊されてしまうかもしれません。とくに個人的な好みでそれを引き裂かれるのは,非常に辛いものです。しかし,これは仕事の一部であり,避けられないパンチにも対応する必要があります」

クリエイティブディレクターになるためには,どのような教育が必要か?

 GamesIndustry.biz ACADEMYで紹介している多くの職種と同様に,クリエイティブディレクターになるための厳しい学歴制限はない。

 DontnodのGuillaume氏は,プログラミングとマルチメディアを学ぶという,より伝統的なルートを取ったが,可能性を高めるために,何年も前から独学で勉強していたと付け加えている。「最初のUnreal Engineを使って,レベルデザイン,モデリング,アニメーション,プログラミング,そして当時改造できたものなら何でも学びました」と氏は語る。

Dontnod EntertainmentのFlorent Guillaume氏
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 Marchal氏は,コミュニケーションや政治学と並行して,マルチメディアも学んだ。彼女が開発の仕事に就こうと思ったのは,ゲームが趣味になってからのことだった。彼女がプレイしていたゲーム,Quantic DreamのOmikronが母国フランスの会社で制作されていることを知り,応募することにしたのだ。同スタジオへの就職が決まると,Fahrenheit,Heavy Rain,Beyond Two Soulsの制作を通して,「ゲームデザインの技術を現場で学びました」と語る。

 このように,教育を受けていないのにクリエイティブディレクターになった例は数多くある。たとえば,Crimmins氏はゲーム関連のコースが豊富にあるにもかかわらず音楽を専攻していたが,そのことを後悔していない。「バンドで演奏しながらクリエイティブなコラボレーションについて多くを学び,作曲しながらクリエイティブなプロセスについて多くを学びました」と氏は語る。「自分の限界に挑戦し,チームでメディアを作っている限り,クリエイティブな方向性の筋肉を鍛えることができるのです」

 もっと突飛な例を挙げると,Triangular PixelsのクリエイティブディレクターであるKatie Goode氏は,大学で物理学と宇宙研究を専攻していた。在学中にプログラミングを学び,グラフィックスアーティストのアルバイトをしていたが,これらがゲーム開発への道を切り開いてくれた。

 Millard氏は美術の学位を持っているが,「ゲームではまったく使ったことがありません」と話している。「アイデアを落書きすることはあっても,アートワークを完成させることはありません。絵よりも言葉が私のツールなのです。しかし,この学位は私の目を鍛え,その場で考え,観客を惹きつけることを教えてくれたと思います」

クリエイティブディレクターとして仕事をするには,どのような経験が必要か?

 教育と同様,クリエイティブディレクターになるために必要な経験の基準はない。Guillaume氏は,ゲームデザインの分野で,ジュニアデザインからシニアデザイン,リードデザイン,そしてクリエイティブディレクターへと,おそらく最も伝統的なルートを歩んできた。氏は,16年前にオーストラリアの小さなスタジオに入社し,その後,Ubisoftで10年間,Assassin’s Creed,Rainbow Six,Ghost Reconなどの作品に携わった。最初のプロジェクトであるVampyrのあとにTell Me WhyというMicrosoftとのプロジェクトで,初めてクリエイティブディレクターの役割を果たした。

Sumo GroupのSean Millard氏
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 Millard氏は,Virgin Interactive,Pure Entertainment,Gremlin Interactive(後のInfogrames),そしてSumo Groupでもゲームデザイナーとして活躍した。

 Interior NightのMarchal氏,Triangular PixelsのGoode氏,Twin DrumsのCudicio氏の3人は,さまざまなスタジオでゲームに関わる仕事をしていたが,クリエイティブディレクターになったのは,自分のスタジオを設立してからで,実質的にはディレクターとしての仕事とCEOとしての仕事を両立させている。

 一方,Crimmins氏は,音楽教育を受けたことで,「かなり変わった」キャリアパスを歩んだことを認めている。「私は,ミュージシャン,ビデオエディター,3Dシネマティックアーティスト,そしてアートディレクターの順で仕事をしていました。さまざまな分野での経験が,同じ目標に向かって複数の分野を指揮する際に大いに役立ちました。クリエイティブディレクターという肩書きを与えられる前から,クリエイティブディレクターのような仕事をたくさんしていましたが,自分の価値を証明するためにやっていただけなんです」

クリエイティブディレクターになるためには,どのような資質やスキルが必要か?

 リーダーシップを発揮するポジション,とくにクリエイティブディレクターのような重要なポジションでは,想像されるとおり,必要とされる資質やスキルは多岐にわたる。鍵となるのは,ゲームの中心となるビジョンを打ち出し,それが小規模なプロジェクトの場合は個人的なビジョンであっても,大規模なプロジェクトの場合は共同のビジョンであっても,それを実現するためにチームを軌道に乗せるための決定を下す能力だ。

 「まだ完全に実装されていない良いアイデアと悪いアイデアの違いを見極める能力が必要です」とMarchal氏は語る。「経験に裏打ちされた自分の直感を信じて,ゲームの未完成な部分を見て,最終的にどのように見えるか,どのように感じるかを予測するのです」

常にあらゆる方面から制約があり,あなたは最高権力者ではありません -Kieran Crimmins氏, Criterion

 「CDは,方向性を安定させ,バランスを取りつつ,チームが意見や貢献をするための十分な余地を確保する必要があります。いつ介入する必要があるのか,いつ手放さなければならないのかを評価する必要があります。なぜなら,すべてを白紙に戻すことはチームを萎縮させ,精神を崩壊させてしまうのでできないからです」

 「細かいことに気を取られがちですが,CDの仕事は一歩下がって全体像を見ることです。一方で,車の色をどうするかなど,非常に細かいことを求められることもあります。ですから,大局的な見地と秒単位でのプレイヤー体験を切り替えられるかどうかが鍵となります。それは,Googleマップのように,すぐに拡大・縮小できる能力のようなものです」

 Guillaume氏は,クリエイティブディレクターを目指す人たちに,「唯一無二のアイデアボックス」になる必要はないと語る。ゲーム制作は,結局のところ,共同作業だ。

 「謙虚な姿勢で,チームの他のメンバーに自分の創造力を発揮してもらう必要があります」と氏は語る。「ビジョンを持つことは素晴らしく,それは必要です。しかし,あなたのビジョンは,あなたが達成しようとしていることと一致するかしないかにかかわらず,何十,何百もの他のビジョンからの挑戦を受けます。ですので,自分の柱が何であるかを理解し,自分のゲームの目的を理解して,時間が経ってもそれが薄まったり,断片化したりしないように,しっかりと維持する必要があります。何年もかけて開発されるプロジェクトでは,何のために何をしているのかを見失いがちになります」

 さらに,クリエイティブディレクターには技術的な専門知識はあまり必要ない。必要な専門家はチーム内にいるはずなので,優れた対人スキルは不可欠だ。「人の集まりのマネージャーとして,チームの健康に気を配ることは,自分のゲームに気を配るのと同じくらい重要です。1人で成功することはありません。みんなが夢見ていたゲームを作るには,あなたにはチームが必要で,チームにはあなたが必要なのです。ですから,お互いを大切にしましょう」

Katie Goode氏, Triangular Pixels
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 Goode氏も同じ意見で,次のように語る。「クリエイティブディレクターという仕事は,自分だけで完結するものではありませんので,信頼,傾聴,そしてチームワークが非常に重要です。新しいアイデアを聞き,他の芸術や創造性を研究し,それをゲームにどのように応用できるかを考え,自分のビジョンを伝える能力が必要になります。チームへのフィードバックは,励ましながらも,ゲームのビジョンが軌道に乗り,品質が維持されるよう,十分に集中して行う必要があります。テクニカルチームやプロダクションチームと交渉し,公平な議論を行い,プレイヤーとチームにとって最善の方法で,全員が納得できる結論を出すことができなければいけません」

 Cudicio氏は,プロジェクトの 「大局的な視点」を保つためには,長期的な計画を立て,全体的な考え方をする必要があると強調しているが,それにはバランスが必要だと警告している。「ビジョナリーと呼ばれる人たちの中には,あまりにも無関心で無秩序な人もいます」

 Crimmins氏は,ストーリーテリング,リスニング,そして彼が言うところの 「経験的合成」(※原文はExperimential synthesisだが後出ではExperiential synthesisとなっており,後者が正しいように思われる)という3つの重要なスキルについて語っている。同僚の意見に耳を傾けることの必要性については,すでに説明したとおりだが,ストーリーテリングについては,ゲームのビジョンを伝えることと,ゲームの実際のプロットを伝えることの両方に当てはまる。

 「人は皆,ストーリーで考えるものだと思います。複雑な情報をこのような構造で表現することは,私が知っている限り,インスピレーションや影響を与えるための最も効果的な方法です」と氏は語る。「また,私はチームや会社,プレスに対してスピーチをすることがよくありますが,その際には人を引きつける話術が不可欠です」

ストーリーや前提条件が自分のビジョンであるかどうかにかかわらず,チームの他のメンバーからの意見を受け入れる必要がある
【ACADEMY】クリエイティブディレクターになるには

 経験的合成とは,「アイデアを聞いて,それを体験したときの楽しいビジョンを想像する能力」のことで,Crimmins氏はこう付け加えている。「これは,人生や仕事の経験が豊富な人であれば,似たようなことをしたことがあるでしょうから,ずっと簡単です」

 最後に氏が推奨するスキルは,「謙虚な信念のパラドックス」と呼ばれるもので,次のように説明している。「それは,自分が優れた洞察力を持っていることを知っており,それに基づいて方向性を作り上げることです。多くの人が,それは無理だ,すべきではないと言うでしょう。その人たちを優しく導くためには,自信が必要です。彼らと仕事をして,あなたが正しいことを示すのです。そのためには,信じられないほどの信念と,謙虚な理解が必要です。そう,この2つは矛盾した性質であることは分かります ―だからパラドックスなのです」

クリエイティブディレクターの役割について,よくある誤解は何か?

 ここまで読んでいただいた方は,ゲームのクリエイティブディレクターの仕事について,頭の中でイメージを膨らませていることだろう。そのイメージは正しいかもしれないが,我々のディレクターは,いくつかの誤解を解いておきたいと思っている。

人の集まりのマネージャーとして,チームの健康に気を配ることは,ゲームに気を配ることと同じくらい重要です

 Millard氏は,この仕事は誰にでもできると考えている。良いコンセプトを持ち,それを実現するためにチームをコントロールするだけだ。

 「この役をうまく演じるには,ある種の性格が必要です」と氏は語る。「私はたまたまクリエイティブな目を持っていて,美術の学位を取得しましたが,アーティストではありませんし,クリエイティブな文章を書くことも好きです。また,私には(どうやら)カリスマ性があるようで,人々をアイデアに賛同させたり,熱意をかきたてたりするのに役立っているようです」

 「私は,自分がこれらのスキルを持っていることを自画自賛しているわけではありません。ただ,幸運にも,私が予想もしなかったような生来のスキルセットを最大限に活用できる職務に就くことができたようです」

 Cudicio氏はこう付け加える。「この役割は,ときには,あまり手間がかからず,ボス的だと思われることもあると思います。私は,常にチームメンバーと協力しながら,すべてを俯瞰して見ることができる,非常に育成的で地に足のついた仕事だと思っています」

Kieran Crimmins氏,Criterion
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 Crimmins氏によると,クリエイティブディレクターを目指す人の中には,この仕事に就くことで自分が夢見ていたゲームを作ることができると思っている人がいるかもしれないが,それはこの仕事に対するもう1つの誤解だという。「クリエイティブディレクターを志望する人の中には,その職に就くことで自分が夢見ていたゲームを作れると思っている人がいるようですが,これも誤解です。スタジオやフランチャイズのリーダーとクラフトチームの間に位置し,それぞれのニーズや要望があります。制約の中で,可能な限り面白いものを作るスキルが必要です」

 しかし,最も大きな誤解は,クリエイティブディレクターが完全にコントロールしているということだと,ディレクターたちは口をそろえて語る。

 「チームがゲームを作るのであって,あなたは彼らの方向性やインスピレーションを育てるのです」とCrimmins氏は説明する。「私はInspire and Influenceモデルを使いたいと思っています。どんな仕事も悪い仕事ではありませんが,私は定期的に新しい方向性を示す資料を作り,チームが目指す方向性を刺激するようにしています」

 Marchal氏はこう付け加える。「自分たちが作りたいと思う体験について,正確で強力なビジョンを持っているべきですが,これは進化するプロセスでもあります。第一に,ゲーム開発は非常に協力的であることです。チームメンバーは,それぞれの感性,スキルセット,創造性を発揮して,ゲームを豊かにしていきます。第二に,ゲーム開発は動く砂のようなもので,迅速な意思決定と調整が必要になるからです」

 Guillaume氏は,最後にクリエイティブディレクターに対する誤解を1つだけ付け加えている。「我々は皆,悪人ではありません」

新米クリエイティブディレクターやこれからクリエイティブディレクターを目指す人へのアドバイス

●すぐに成功すると思わないこと
 経験やスキルの有無にかかわらず,クリエイティブディレクターという役割は,入社してすぐに完璧にこなせる人はほとんどいない。キャリアの早い段階で昇進するものでもない。Millard氏は,クリエイティブディレクターになるチャンスを得るまで,20年間スタジオのフロアで働いていたと語る。

Allan Cudicio氏, Twin Drums
【ACADEMY】クリエイティブディレクターになるには

 「責任感とハードワーク,そしてノンストップで頭をフル回転させることを過小評価してはいけません」と氏は語る。「文化のスポンジになりましょう。ゲームのことは忘れて,ほかにどこからインスピレーションを得ればいいのでしょうか? 読む。読む。見る。聞く。ゲームばかりやっていると,同じような決まり文句を繰り返すだけで,クリエイティブとは程遠いものになってしまうでしょう」

●常に他の人と仕事をして,彼らから学ぶ
 クリエイティブディレクターはリーダーシップを発揮するだけでなく,協力的なポジションでもあることから,Crimmins氏は,デベロッパにはチームワークのスキルを高めることを勧めている。そのためには,できるだけ多くのプロジェクトに参加し,理想的にはさまざまな人と一緒に仕事をすることが有効だ。

 「ゲーム制作はチームスポーツですので,最高のコーチになる方法を学ばなければなりません」と氏は語る。「批判的な意見に耳を傾け,それを個人的に受け取らないでください。批判は何かを上達させるためには重要ですが,とくに骨の髄まで言われたときには,しばしば傷つくものです。皮肉なことに,自分が経験したことのないことを指摘する厳しい批判こそが,最高の変化をもたらすのです」

 Goode氏も同じ意見だ。「デザイナーとして何人かのディレクターの下で働いたことで,彼らの優れた点,うまくいかなかった点や改善点,そして自分が彼らの立場だったらどうするかを学ぶことができました。これらの経験は,製品やスタジオを危険にさらすことなく,給料をもらいながら得ることができました」

●自分と自分のビジョンを信じる
 クリエイティブディレクターは,自信と信念が必要な仕事だ。困難で意気消沈することもあるが,チームは自分たちが何をしているかを知っている人に導かれていると感じる必要がある。

 Guillaume氏はこう締めくくる。「自分自身,自分の強み,自分のアイデアを信じること。自分が世界に伝えなければならないこと,自分にとって最も重要なことを信じること。そしてさらに重要なのは,他の人たちを信じて,彼らがこのビジョンに何をもたらすことができるか,そしてどうやって一緒に偉大なことを成し遂げることができるかを信じることです」