Game*Sparkレビュー:『アサシン クリード ヴァルハラ』 | Game*Spark

2020年11月10日、(あくまで筆者の私見なので異論はあるでしょうが)ユービーアイソフトの看板シリーズといっても良いであろう『アサクリ』シリーズの最新作、『アサシン クリード ヴァルハラ(以下ACV)』が発売されました。前々作にあたる『アサシン クリード オリジンズ』からのRPG要素を取り入れたリニューアルが好評で、特に前作『アサシン クリード オデッセイ(以下ACO)』は各所で絶賛され、人によっては「シリーズ最高傑作」との評価を得た人気作でしたから、本作に集まる期待もかなりのものだったと思います。

まず最初に触れておきますが、そういう期待の大きさもあって本作発売後の流血規制絡みのゴタゴタに関しては、筆者も「大変残念である」という感想を抱きました。ヴァイキングが主役の暴力を取り扱ったゲームとして、表現の規制を行うときには(もちろん国ごとの基準などどうしても仕方のない部分もありますが)細心の注意を払って欲しかった、というのが正直な気持ちです。

記事執筆現在で遊べるバージョンも切断表現などゴア描写に関してはかなり頑張っているので、対応が誠実でさえあればある程度は許されたのではないかと思います。いちファンとして、(CEROの審査を通過していたという)流血表現が改善されたバージョンの配布を切に願う次第です

そんなわけで今現在、若干炎上中の本作ですが、ここからはゲーム内容についてのレビューをしていきます。性質上かなりの量のネタバレを含むので読む方はご注意ください。また、プレイにはPC版を使用しています。

世界観、グラフィックス

本作は西暦800年代後期の「ヴァイキング時代」真っ只中を舞台にしています。故あって生まれ故郷のノルウェーを離れた主人公エイヴォル一行が七王国時代のイングランドに入植し、そこで様々な勢力と同盟を組んだり、傀儡を据えたりして勢力を伸ばしていくというのが主たるゲーム内容です。ゲーム序盤でエイヴォルは、後のアサシン教団となる「隠れし者」と関わりを持ち「アサシン」の武器と技術を手にするので、その技術もヴァイキングとしての目的の達成に大いに役立つことになります。

シリーズの近作ではユーザーによる「いや、もうアサシンじゃなくね?」というツッコミもすっかりおなじみとなった感がありますが、一応内部的に筋の通ったストーリーライン/理由付けみたいなものもあったりします。

主人公のエイヴォルは性別を選択できますが、筆者は全編を通して「男エイヴォル」でプレイしました(前作は女主人公のカサンドラで遊んだので、という理由です)。性別が選べることにも一応設定上の意味がある……とのことですが、あまり気にせずフィーリングで選んで大丈夫かと思います。

本作はヴァイキングによる略奪、陰謀、暴力などがメインで描かれるため、全編を通してかなり陰惨なトーン。また、イングランドには超巨大都市があまり存在せず(おそらくは後のロンドンとなる「ルンデン」が最大の都市でしょうか)、沼地や霧も多いために、筆者の主観かもしれませんがかなり辛気臭い雰囲気です。『アサクリ』シリーズは基本的にずっと陰惨で辛気臭いトーンであるとも言えるのですが、『オデッセイ』の名のとおりどこか抜けのいい「冒険」感があった前作から比べると、明確な変化があるように感じました。

もちろん「辛気臭い」というのはまったく批判しているわけではなく、自然の美しさと陰惨さがこの上なく表現されたグラフィックスは非常に素晴らしいものです。マップはかなり広大で(実際のイングランドに比べるとかなり縮小されているでしょうが)北部では雪原が見られるなど地域差もあり飽きさせません。

各同盟目標には通底するメインストーリーの他に、それぞれ独立した(おもに「君主」に纏わる)短編的なストーリーがあるのですが、例えば「ウィッカーマン」という独特の文化が紹介されるなど非常に興味深く、また感情移入できるものでした。前作から引き続き、ストーリー上ではジレンマのある難しい選択を迫られるシーンもあり、プレイヤーの倫理観が試される場面もちらほら。サイドクエスト的存在である「謎」も一つとしてコピーペースト的なものがなく、しっかりした出来で面白かったです。

また本作には、サイドクエスト的に北欧神話の世界である「アースガルズ」や「ヨトゥンヘイム」に(エイヴォルの“夢”という形で)訪れるパートがあります。北欧神話には様々なファンタジー系ゲームの「元ネタ」になっているようなエピソードやアイテムが存在しているので、これまであまり神話についての知識を持っていなかった筆者にとっては、ちょっとした「勉強」としても面白かったです。

その他にも、現在の北米大陸である「ヴィンランド」も登場するなど(コラボレーションもしていましたが、国内ではマンガ『ヴィンランド・サガ』の印象が強いかと思われます)オタクが思うヴァイキング知識がてんこ盛りの豪華仕様で、本作一本で(我々の思う)「ヴァイキング感」を満腹になるまで味わえるでしょう。

もちろん『アサクリ』シリーズに通底する「現代編」や、超古代文明人である「イス」に纏わるストーリーラインも登場します。筆者は正直「現代編」についての理解が浅くよく分かっていなかったため、後に考察などを人に聞いたりしてようやく納得したという程度ですが、いっときの迷走っぷりから考えると大分考察しがいがあるしっかりしたシナリオになったんだなと、ちょっと感心しました。

それに「超古代文明」という物語装置のおかげで、ゲーム中で神話生物と戦ったり異常な建築物が登場したりできるわけで、そういうケレン味はなかなか楽しかったりもします。ただし、本作から『アサクリ』シリーズに入門するプレイヤーにとって、おそらく「現代編」はかなり意味不明かと思います。ゲームの大半を占めるエイヴォルを主人公とした過去編に関しては初心者でもまったく問題なく遊べますから、現代編パートがやってきたら「まあそんなこともあるんだな」と受け流すのがおすすめでしょう。

魅力的なキャラクターや人間関係

魅力的なキャラクターたちも本作の大きな魅力です。悪役でさえも表面的ではなく深みを持った人物として描かれており、(動乱の時代という背景もあって)単純な「善悪」や「好き嫌い」を一見で判断することが困難です。

例えば、イースト・アングリア編に登場するオズワルドは最初かなり頼りなく感じられるキャラクターなのですが、物語を進めるにつれて実は「肝の据わった芯のある人物」であるという一面が見えてきます。また、そういう人物たちとの交流を経ることで、エイヴォルも人間的に成長していきます。

そんな魅力的なキャラクターたちの中で筆者がもっとも気に入ったのは「アイヴァー」です。アイヴァーはかなり粗野で卑劣、暴力的で会話の通じない人物であり、その上ストーリー中でかなり激烈な嫌悪感を催すようなことを行うキャラクター。しかし、そんな彼であっても単純な悪役としては描写されず、一本筋の通った信念があったり可愛らしい一面もあるなどの部分が描かれています。こういう多様性のある人物描写は本作のすばらしいところでしょう。

ストーリー中盤から後半にかけて、エイヴォルの義理の兄であり、仕えるべき酋長であるシグルドとの人間関係がフォーカスされていきます。様々な事件によってどんどんおかしくなっていってしまうシグルドにどう接するのかを選択するシーンは、なかなかの緊張感があって面白かったです(余談ですがマンガ『ベルセルク』鷹の団編におけるガッツとグリフィスの関係をちょっと思い出しました)。

また、前作に引き続き(主人公の性別を問わず)一部のキャラクターとはロマンスと呼ばれる恋愛パートを楽しめます。基本的にはサブ要素なので描写もかなり蛋白ですが、こういう要素がちょっとあるのは、筆者にとってはけっこう嬉しいことでした。

洗練されたアクションRPG要素、ゲームプレイ

両手それぞれに違う武器を持てたり、スタミナ制が導入されるなど、本作からアクション要素はかなり変化しています。好みもあるでしょうが、重厚感にあふれ、より戦略的で歯ごたえが増したアクション要素は、筆者的にはかなり楽しかったです。またレベル制が廃止されているため、好きな武器や防具をずっと使っていけるのというのもかなり良い変更点です。

「戦闘力」というレベルと似た働きをする項目もあったりはするのですが、スキルツリーの習熟度のみで判断されるので、前作のように「課金の経験値ブーストアイテムを買っておいったほうがいろいろ捗る」というようなことはなくなりました。課金要素がほぼ見た目のみになった(もちろん課金武器や課金素材もありますが、普通に遊んでいれば攻略上必要となることはまずないです)ことは英断だと思います。

スキルツリーでの育成も序盤のうちはかなり楽しいです。ただし、後半になれば自ずと殆どの部分を埋められるようになってしまうため、「ビルドによっていろいろ強みが変わる」というような楽しみは希薄でした。しかし、いつでも無償で振り直し可能といった、かなり割り切ったシステムには非常に好感が持てます。スキルポイントが大量にあると振り直しがかなり面倒なのは問題点と言えますが、後半部に振り直しが必要になるようなことは特にないので大丈夫です。

割り切った作りといえば「海戦の廃止」、そして「一撃死オプション」の導入にも触れないわけにはいかないでしょう。「海戦」はそれなりにファンもいたように思いますが、船の強化に素材が大量に必要になったり移動がめんどくさくなったりと好き嫌いの分かれるシステムでしたので、筆者的に廃止は好ましかったです。

また、オプション項目でステルスキルを一撃死に設定できるようになったのも、シリーズファンとしては嬉しい変化でしょう。ゲームバランスを破壊しかねないオプションなため使用には注意が要りますが(ステルスキルを強化する系のスキルが一切不要になってしまうので)、「ゲームバランスを破壊する自由」がユーザーに与えられているのは、豊かなことだと思います。

無論、削られた要素ばかりではなく、植民地の強化や襲撃ミッションなど『ACV』ならではの追加要素も充実しています。ちょっとしたミニゲームである「口論詩」は翻訳がすばらしく、ちゃんと韻を踏んだ文章で遊べます。サイコロのミニゲーム「オーログ」は筆者的にはいまいち楽しさがわからないのですが、もちろんやらない自由もあるので大丈夫でしょう(後々メインストーリー以外でちょっと強い相手にオーログで勝つ必要が出てきたりもするのですが、一回きりなのでなんとか頑張れました)。本作には他にも釣りや狩り、コレクタブルなど、とてもじゃないがちょっとやそっとじゃ遊びきれないほどの膨大な要素があります。

まとめ

前述の通り、流血規制とその後の対応のまずさによってケチのついた感のある本作ですが、その内容はかなりすばらしいものだと感じました。様々な美点に加え、なんと言ってもその大ボリューム感は堂々たるもので、急がなければ年越しぐらいまでは余裕で遊べるコンテンツ量を誇っています。ゴタゴタがなければ切断表現などは国内版としてはかなり頑張っている方、という評価もできたでしょうから、その点は本当に残念です。

もちろんオープンワールドゲームらしくバグも多く、強制終了されたことも一度や二度ではありませんでしたが、本作は自動セーブの頻度が高くほとんど巻き戻しが発生しなかったため、あまり気にならなかった点もよかったです。最後に、筆者は同時期に発売された『ウォッチドッグス レギオン』のレビューも担当したため、比較する目線が常にありました。同じ定価とは全く思えないぐらいそもそものコンテンツ量が違うため(題材や舞台設定の好みを一切ゼロにすると)どちらか一本だけを買うとするなら、間違いなく本作『ACV』のほうがオススメだと思います。


総評:★★★

良い点

・凄まじいコンテンツ量
・さまざまな改善、洗練により遊びやすくなっている
・魅力的なキャラクター
・美しいグラフィックス、世界観

悪い点

・現代編がおそらく初心者には意味不明
・頻発するバグ
・一連の流血規制絡みの問題

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