目標はストII国技館大会を超えるイベント開催――プロゲーマー・ウメハラ氏が振り返る2020年の活動内容。2021年の抱負も聞いた

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目標はストII国技館大会を超えるイベント開催――プロゲーマー・ウメハラ氏が振り返る2020年の活動内容。2021年の抱負も聞いた


 国内初のプロ格闘ゲーマーとして2010年よりキャリアをスタートし,今年で活動10周年を迎えたプロゲーマー・梅原大吾氏こと通称ウメハラ。すでにプロゲーマーでもベテランの域に達している同士だが,今年の活動内容を思い起こすと,Cygames Beast解散後のTeam Mildom Beastの再始動や配信への注力,競技シーンでの活躍とトピックスに事欠かない1年だったように思える。そして,それら活動のほとんどで圧倒的な存在感を示したことも確か。格闘ゲームのeスポーツシーンで,もっとも注目されその期待に応えてきたことは事実だろう。

 今回は今年1年,すばらしい活躍を見せたウメハラ氏に,年末の総決算ということで2020年を振り返る特別インタビューを実施させてもらった。トピックスごとの振り返りはもちろんのこと,今後の目標や来年の抱負についても話を聞けたので,ウメハラファンの読者にはぜひチェックしてほしい。

※今回のインタビューはオンラインで実施。また,写真は過去に取材したときのものを使用しています

プロゲーマーになってからは逆境でいつもいい状況を生み出せてきた

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。2020年の「ストリートファイターV」の競技シーンではウメハラさんの活躍がとくに目立ちました。今回はそんなウメハラさんに1年を振り返ってもらいたいと思います。

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ウメハラ氏:
 2020年は僕自身もいい年になったと感じています。「Capcom Cup 2020」の出場枠を獲得できたことが一番大きかったのですが,それ以外にも新型コロナウイルスの影響でオフライン大会が中止になってしまったなかで,配信を中心にしたプロ活動の可能性を見出すことができました。配信に注力して1年目なので今後どう展開していくかはまだ分かりませんが,活動の幅が一気に広がりました。

4Gamer:
 正直なところ,今年はオフライン大会がなくなってしまい,国内のプロ格闘ゲーマーはどのように活動していくんだろうと思っていました。

ウメハラ氏:
 僕の人生を振り返ると今年のような逆境の状況は何度かあるんですが,毎回“いいこと”の前触れだったりするんですよ。ピンチをなんとかしようとするときに,いつも以上の力が出せるんです。ゲームなら,キャラクターが調整で弱くなったときに地力が付いて,後々いい形で自分に返ってくるといったふうに。

4Gamer:
 ピンチではないかもしれませんが,ウメハラさんは2010年に国内初のプロ格闘ゲーマーとして活動を始めました。これまでに前例がない職業でしたし,あれも逆境の状況だったのではないでしょうか。

ウメハラ氏:
 確かにそうですね。プロ1年目は本当にどうなるか分からなかったし,そういう意味だと今年と似ていたと思います。プロ1年目もがむしゃらに活動しましたが,環境が変化して,どうなるか分からないほうがやる気も増すし,全力を尽くせるんですよ。今年はMildomに配信活動を移したのもあって,春から夏にかけては配信に全身全霊を注ぎました。

4Gamer:
 Mildom移籍発表時に実施したインタビューでは,新しい環境への期待と不安が入り混じっている様子でした。

ウメハラ氏:
 だからこそ全力を出せたのだと思います。客観的に見ると,ふだんは全力を尽くしているつもりでも,自分が知らないうちに余力を残しているんでしょうね。それが逆境になるとすべて出し切れる。少なくともプロゲーマーになってからは逆境でいつもいい状況を生み出せてきました。

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Team BeastはCygamesからMildomへ。渦中のウメハラ氏に聞く,その決断と2020年のプロゲーマー事情


 2017年から約3年,Cygames Beastを率いて活動してきたウメハラ氏だが,このスポンサー契約の終了が報じられたのが2020年3月のこと。その同チームに本日(4月3日),新たなスポンサーとして「Mildom」が名乗りをあげた。この決断に渦中のウメハラ氏は何を思うのか,話を聞いた。


[2020/04/03 15:01]

4Gamer:
 逆境の話ですが,ウメハラさんは格闘ゲームでも同じことが言えるんでしょうか。

ウメハラ氏:
 成績が振るわないときのほうが集中力は増します。もともと僕は,常に自分のプレイ内容に疑問を持ちながら対戦しているんですが,やはり勝っていると安心してしまうところがあると思います。心の内どこかで「勝ててるんだから大丈夫」と安心してしまう。負けている状況だとこのままではいけないということが現実としてあるから分かりやすい。
 だから,自分でも2019年はがんばったなと思う。成績は振るわなかったけど,努力や工夫の方向性は間違っていなかった。それが今年になってガイルも強くなって芽が出たんだと思っています。

4Gamer:
 努力や工夫の話ですと,去年くらいからウメハラさんは相手の動きに対する反応を特化させる練習を取り入れてきました。これがうまい具合に作用したのでしょうか。

ウメハラ氏:
 それももちろんあるんですが,それは1つの要素に過ぎないですね。反応速度を上げたとしてもそれだけですべてが解決することはありません。ただ,僕も年齢を重ねたことで気付かないうちに失われた能力というのが絶対にあって,攻略は用意しているのに,それを出しきれないことがある。反応を特化させる練習をしたことで攻略を出しきれず負けることが減ったというのが結果です。

4Gamer:
 今年はオンライン対戦が中心となりましたが,ラグが非常に少ないとされる「ストリートファイターV」のPC版の導入も大きかったのでしょうか。

ウメハラ氏:
 オンライン対戦という話になると,これまでの「ストリートファイターV」とは状況がかなり変わってきています。単純にラグが減って,できることが増えていますし,プレイヤーのスキルも環境に合わせて向上している。僕が使っているガイルは相手の動きに対応できればできるほど力を出せるキャラなので,より力を出せる環境が整いました。

4Gamer:
 今年の大会成績やふだんの配信を見ても,ウメハラさんの扱うガイルは相当に仕上がっているように感じられますが,自身でまだ足りないと思っている部分はありますか。

ウメハラ氏:
 分かっている範囲で足りない部分はあまりないので,逆に今は足りないことを探す作業をしています。勝てているのは確かですが,自分に足りないことは絶対にあるはずなんです。最近はトリガーIIの「ナイフエッジ」に目を付けています。攻略のし甲斐がありますね。
 あとは,試合を見返したときに,ここはこうするべきだったという判断ミスがいくらでも出てきます。この判断ミスを試合で極力減らすことが課題ですね。

4Gamer:
 ウメハラさんのほどのプレイヤーでも判断ミスはたくさん見つかるものなんですか。

ウメハラ氏:
 すべてのシーンで最適解を選べているプレイヤーなんてほとんどいないんです。早い展開だと手癖や反応でしてしまう行動も多くて,大体がなんとなくだったり,経験則だったりで動いてしまっている。それらすべてを見直す作業をしようかなと考えています。直近だと大きな大会は「Capcom Cup 2020」の決勝大会くらいですから,じっくりと攻略に時間を使えるのが楽しみです。

4Gamer:
 判断ミスのエピソードですと,ウメハラさんの配信でも取り上げていましたが,「CPT2020 アジア-東大会1」グランドファイナルのふ〜ど選手との試合で,フルコンボからクリティカルアーツにつなげようとしたところ,直前のサマーソルトで気絶してしまったということがありました。ウメハラさんはそのあとの気絶からの投げが微妙だったとおっしゃっていました。

ウメハラ氏:
 あれはもっと早くコンボを切り上げればよかったんですが,無駄に完走してしまいました。本当にレアケースなんですが,1度経験したので次に似たような状況があれば,コンボを短く切り上げるようにするとは思います。

4Gamer:
 あの時のコンボもそうですが,途中でコンボを切り上げても倒せる状況だとしても常に最大コンボを入れることを意識しているのでしょうか。

ウメハラ氏:
 あの状況だと,途中で切り上げてクリティカルアーツを当てれば勝てるなと判断する時に相手の体力を見る必要がありますよね。そこで気がそれて失敗してしまうことはすごく多いんです。これまでも体力確認をして,失敗してしまったことは何回もあったので,レアケースを考慮するよりも余計なことを考えず最大を入れれば間違いないだろうという考えです。

4Gamer:
 今の話を聞いて,ガチくん選手が優勝した「Capcom Cup 2018」本戦グランドファイナルの最後を思い出しました。板橋ザンギエフ選手を体力ドットにして気絶に持ち込んだのですが,ガチくん選手は飛びからの大キックでトドメを刺したんです。一切の油断をしない選択肢に感銘を受けたことを覚えています。

ウメハラ氏:
 大会ではだれでも絶対に緊張しているし,自分が正しい判断をできているかどうかは分からないんです。間違いがあってはいけない場面こそ,いつも練習していることをするべきなんじゃないかって思っていますし,僕はそれを心掛けていますね。

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「自分の生きる場所は格闘ゲーム以外にはない」という信念

4Gamer:
 今年1年のウメハラさんの活動を振り返っていきたいと思います。1月の「EVO Japan 2020」は49位でのフィニッシュでしたが,続く2月の「TOPANGA CHAMPIONSHIP」では,4位という好成績で大会を終えました。ただ,この大会でもっとも大きな話題となったのはときど選手との試合だと思っていて,0-7というスコアで敗北を喫してしまいました。

ウメハラ氏:
 取り組み方がよくなかったなと試合が終わった瞬間に反省しました。甘い意識でやっていたなと。負けに気をおとすのではなく,すぐに次はどう取り組んでいくかということに気持ちが切り替わりました。振り返ってみると,あのときど戦の敗北からスイッチが入ったような気もするんですよ。自分の内面のことなので実際のところは分かりませんが。

ときど選手。2020年2月開催「TOPANGA CHAMPIONSHIP」より
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4Gamer:
 実際にあれ以降のウメハラさんの大会成績は上位入賞ばかりになりました。

ウメハラ氏:
 オフライン大会がないことでじっくり練習できたとか,レバーレスコントローラが馴染んできたとか,いろいろと理由はあると思うんですが,要因の中にあの敗戦は絶対に含まれますね。1から攻略しないと,という気持ちになれました。

4Gamer:
 過去に同じようにショックを受けた敗戦はあるのでしょうか。

ウメハラ氏:
 一番だとプロになりたての頃の第2回「GODSGARDEN Online」です。EVOを優勝した年で自信もあって,予選リーグは1位抜けできたんですけど,決勝リーグは1勝4敗と振るわなかった。あれと比べると,ほかの負けは全部印象に残らないほどショックを受けました。

4Gamer:
 当時はどのような心境でしたか。

ウメハラ氏:
 まず最初に思ったのが,キャラクターに妥協してはいけないということです。環境で一番強いキャラクターを選ぼうと。「スーパーストリートファイターIV」のリュウは弱くもなかったんですけど,ほかに強いキャラクターがたくさんいたんです。EVOは勝てたけど,対策を煮詰められると厳しいなと感じました。それで次に選んだのが「アーケードエディション」で追加されたユンでした。

4Gamer:
 当時のユンは確かに最強キャラ候補には真っ先に挙げられるキャラクターでしたね。今年の話に戻りますが,「TOPANGA CHAMPIONSHIP」に続く大きなトピックスは,Cygames Beastの解散,そしてTeam Mildom Beastの始動だと思います。配信するプラットフォームが移ってもコミュニティが付いてきてくれた要因はどこにあったと考えていますか。

ウメハラ氏:
 成功した理由やファンが付いてきてくれた理由は,いくつかあると思っています,1つは新しい番組企画を押し出していったこと。とくに格闘ゲームシーンが好きな人であれば,絶対に見たい! と思わせるものが多かったんじゃないかなと思っています。

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最初に感じていた不安や焦りはもう無い――Team Mildom Beastとして再始動したウメハラ氏に自粛期間中の活動内容や現在の心境を聞いた


 日本を代表するプロゲーマーとして活動を続けるウメハラ氏。4月3日に発表されたTeam Mildom Beastとしての再始動は,Twitchの同業他社であるMildomがスポンサーということもあり,大きな波紋を広げた。始動からおよそ1か月経過した氏の心境や活動内容を聞いたのでその内容をお届けする。


[2020/06/02 00:00]

4Gamer:
 自分も面白い企画をいろいろと楽しませてもらいました。

ウメハラ氏:
 とにかく1度でいいから見に来てもらう必要があった。新規オープンした飲食店で1度食べてもらうのと同じことですね。

4Gamer:
 個人的に格闘ゲーム界隈から支持を得るためには,コミュニティへの信頼感が不可欠だと思っていて,ウメハラさんがこれまで積み重ねてきた信頼感があったからこそ,成功したのではないかと思っているのですが。

ウメハラ氏:
 それは僕も感じています。そもそも僕には「自分の生きる場所は格闘ゲーム以外にはない」という信念があるんです。

4Gamer:
 格闘ゲーム1本で生きてきたウメハラさんらしい信念だと思います。

ウメハラ氏:
 ただ,活動しているとほかの業界からご褒美的にお話をいただくことがあるんです。本を出しましょうとか,講演をお願いしますとかですね。そのまま格闘ゲームの枠を超えて活動しましょう,と話が大きくなっていくこともあるんですが,そういうときに僕は,意識的に格闘ゲームに戻るようにしています。「すいません,これ以上は遠慮します。本業に支障が出るので」って。

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4Gamer:
 そういった姿勢が今のコミュニティからの支持にもつながっているのだと思います。また,ウメハラさんは主戦場となる「ストリートファイターV」の配信も欠かさず続けていますよね。

ウメハラ氏:
 今年はいろいろなゲームやイベントの配信をしましたが,格闘ゲームを軸にしている以上,格闘ゲームを見てくれる人,興味がある人を増やさないとダメだなって思いました。いろいろやった結果,一周回ってですが。
 もちろん,新しい話題のゲームをプレイすれば一時的にみんなが注目してくれるというのは分かるんです。雪山(Project Winter)とかは本当にすごかった。ただ,それって一過性のものだなってことも分かっていて,ただ雪山という新しい土地にきて,そこに成っている実を収穫しているだけなんですよ。

4Gamer:
 確かにMildom配信での「Project Winter」配信はすごい盛り上がりでした。

ウメハラ氏:
 ただ,僕の本業は格闘ゲームだから,その土地を「耕すこと」はできないんです。雪山という土地を少しずつ消費している感覚ですよ。でも格闘ゲームであれば,土地を耕して,種を撒いて,育てられる。今は人が少なくても努力次第でいくらでも伸ばせる可能性があるんです。今年はあらためて「ストリートファイターV」をがんばらないとという考えに行きつきましたが,それは今話したような思いを経たからです。

4Gamer:
 なるほど。そうなると,今年から始めた初心者講座や初心者向けイベントはその派生ということでしょうか。

ウメハラ氏:
 その通りです。まずは格闘ゲームという世界に興味を持ってもらおうということで始めました。格闘ゲーム界隈の人って実際変わった人が多いし,話も面白い。ただ,動画配信はそれだけで勝負できる世界ではないと思うんですよ。これはすべての格闘ゲーマーに言えることかもしれない。
 もし,配信でがんばっていくのであれば,トーク以外の武器が絶対に必要で,僕たちの武器ってやっぱり格闘ゲームのプレイなんです。それであれば,地に足をつけて活動して,初心者や格闘ゲームのファン層を増やさないといけないですよね。

4Gamer:
 そうなると,今後は「ストリートファイターV」の配信を中心に活動していくという事でしょうか。以前のようにほかのゲームはあまりプレイしなくなると。

ウメハラ氏:
 ほかのゲームを配信することは全然あると思いますが,今年みたいにいろいろゲームをプレイすることは少なくなるかもしれません。今は僕がメインでプレイしている「ストリートファイターV」の面白さをみんなに伝えたい。最近はメインキャラクターのガイル以外も使って配信していますが,違うキャラクターの魅力だったり,いろいろな遊び方を通して,楽しい部分を感じてくれたらうれしいですね。

4Gamer:
 最近は本田とファンを使っていましたが,あれには何か意図があったのでしょうか。

ウメハラ氏:
 ちょうど初心者がたくさん見に来てくれるようになってきたので,ガイルばっかりでガチガチなのもちょっと……ということで,ふだんあまり見ないキャラクターを使えばみんな楽しんでくれるかなって思ったんです。ただ,誤算だったのは本田を使いだしたら,考えていたよりも早く勝ててしまって(笑)。

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4Gamer:
 ウメハラさんの本田の仕上がりは早かったですね(笑)。

ウメハラ氏:
 じゃあ次はファンに移ろうって。ただ,ファンも結局思ってたより強いんですよ。

4Gamer:
 実際にその2人を使ってみて,プレイする前の印象と合致していましたか。

ウメハラ氏:
 これがもう,本田もファンもまったく違いました。これは持論ですが,そのキャラクターの第1人者がどれだけ攻略しているかに評価が左右されていることが多いんじゃないかと思います。弱いとされるキャラが一番上ってことはないですが,そこそこ強かったということは結構あるんです。僕はまず自分なりの攻略をしてみるところからいつもアプローチしていますね。

4Gamer:
 次に触ってみようと考えているキャラクターは誰になりますか。

ウメハラ氏:
 ベガですね。ガイルを使っていて,あまり対戦できていないキャラですし,大会で対戦することも多いので。ベガに興味があるというよりは触っておくべきだろうという考えです。

4Gamer:
 ベガはサブキャラクター候補に入っていたりはしますか。

ウメハラ氏:
 サブには考えていなくて,やっぱり対策面です。結果的に手応えを感じたらありえるかもしれませんが,それが目的ではないです。僕はガイル視点の考え方になってしまっているので,今後も考え方の幅を広げるために,いろいろなキャラクターを触っていこうと考えています。

4Gamer:
 少し話が戻りますが,先ほど「Project Winter」の話が出ましたが,ウメハラさんは今年,本当にいろいろなゲームをプレイされましたが,とくに印象に残ったタイトルは何になりますか。

ウメハラ氏:
 ベストを挙げるのであれば「UNDERTALE」。これはもう一強。続くのが,「東方」「Minecraft」「Project Winter」かな。自分が知らない面白いゲームがたくさんありました。

4Gamer:
 実は自分もウメハラさんが「UNDERTALE」を絶賛しているのを見て,一通りプレイしてしまいました。

ウメハラ氏:
 本当ですか。それはすごくうれしいですね(笑)。

4Gamer:
 ウメハラさんが楽しそうにプレイするのを見て,自分のように後追いで始める人は多いかもしれませんね。話を戻しますが,Team Mildom Beast始動後のトピックスとしては,7月の「Capcom Pro Tour Online 2020」アジア東1予選大会の優勝が挙げられます。大会結果を振り返っていかがでしょうか。

ウメハラ氏:
 あの大会の優勝は,今考えても僥倖ですね。今年は配信活動も積極的に行ってきたので,「ストリートファイターV」だけに注力できた年ではありませんでした。いろいろと活動を広げる中で,さらに「Capcom Cup 2020」の予選も突破できたのは,本当に幸運なことだと思っています。

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ウメハラ選手に聞く“CPTオンライン2020 アジア・東1”の振り返り。近況やカプコンカップ本戦への意気込みも聞いた


 2020年7月25日,26日に実施された「Capcom Cup 2020」の予選大会「Capcom Pro Tour Online 2020」アジア東1予選大会を勝ち抜いたウメハラ選手のインタビューをお届けする。予選大会を振り返ってもらうだけでなく,近況や本戦への意気込みなども聞いてきたので,ぜひ読み進めてほしい。


[2020/08/06 17:00]

4Gamer:
 ただ,以降の大会でも「Blink All Star Challenge: Japan」の優勝を筆頭に,ほとんどの大会で上位の成績を収めています。現在の自身の力量をどのように分析していますか。

ウメハラ氏:
 長期戦で戦って負け越してしまう相手はいないと自信があります。実際に対戦してみないと分からないですけど想像ではいない。だから,今年の好成績は実力通りの結果が出たと言っていいかもしれません。

4Gamer:
 去年のウメハラさんは「Capcom Cup」本戦出場も後半で決まるなど,大会で苦戦していたようでした。

ウメハラ氏:
 去年は大会でベスト8には何回か残れましたが,もう優勝できるイメージが湧かないほどダメでしたね。ただ,去年ガイルで踏ん張って,これまで気付けなかったガイルの強みに気付けたのは間違いなくて,あれで地力が付きました。あの時の苦労がなければ,今年の活躍はなかったわけですから,去年も結果的にはとてもいい1年だったと思っています。

4Gamer:
 Team Mildom Beastのメンバーはウメハラさんだけでなく,Infexious選手も今年ヨーロッパ予選を突破して「Capcom Cup 2020」本戦出場を決めました。自分が記憶している限りでは,ウメハラさんはかなり早い時期からInfexious選手を評価していましたが,これには何か理由はあるのでしょうか。

ウメハラ氏:
 僕がInfexiousと初めて対戦したのは「Red Bull Kumite 2017」の時なんですが,ベスト4で当たって負けて,これは物が違うなって感じました。実はその時からすでに目は付けていたんですが,しばらく表舞台に出てこなくなって,活動を再開するということでチームに誘ったんです。

Infexious選手。2020年3月開催「獣道 III」より
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4Gamer:
 1度の対戦で分かるものなんですね。

ウメハラ氏:
 自分で言うのもなんですが,プレイヤーを見る目には自信があるんです(笑)。僕がこの人は伸びるぞって思った人で,伸びなかった人を見たことないくらいです。

4Gamer:
 ウメハラさんは今年活躍を見せているカワノ選手も早い段階で評価していました。そのほかに過去に該当するプレイヤーはいたりしますか。

ウメハラ氏:
 例えば,「ストリートファイターIII 3rd STRIKE」のにっととか。僕がプレイしていた時代は彼はそれほど強いプレイヤーっていう評価じではなかったですが,1回対戦してみて,これは絶対強くなると思いました。しばらくして,にっとがめちゃくちゃ勝っているという話を聞いて,やっぱりかと思いましたよ。あとはいろんなゲームで活躍したりきもすぐに分かりました。本当に強いプレイヤーは1回対戦すると分かります。

4Gamer:
 伝わってくるプレイヤーの強さとはどのような部分なんでしょうか。

ウメハラ氏:
 具体的に表現するのがすごく難しいのですが,一言で表すなら動きが違います。攻略面などのロジックな要素ではありません。

4Gamer:
 ちなみにウメハラさんがプレイヤーを評価するうえで,重視している要素は何かありますか。

ウメハラ氏:
 これは僕の好みなんですが,高い理想をもって取り組んでいる人は好きです。例えばガチくんはすごく良くて,ネタに走らず真っ当に努力して勝つスタイルなんですよ。これは自分もそうだし,そういったプレイスタイルが好き。Infexiousもこのタイプです。
 正直,楽して勝とうとしている人には魅力を感じない(笑)。僕が格闘ゲーム好きだからそう思ってしまうのかもしれないけど。もちろんプレイスタイルは人それぞれで,ただ僕が魅力を感るかどうかというだけの話です。

4Gamer:
 10月の「Capcom Pro Tour Online 2020」アジア東2予選大会では,ウメハラさんは出場せず,応援配信をしていました。大会を見ての感想や印象を聞かせてください。

ウメハラ氏:
 ガチくんが優勝したわけですけど,実は僕としてはちょっと意外でした。実力は問題ないんですが,ラシードが去年に比べると評価が落ちて,大会で勝ち切れるのかな? と思っていたんです。ただ,内容は完璧でしたし,素直にすばらしかったですね。

4Gamer:
 グランドファイナルでは,ももち選手にリセットされてから3連勝という内容で優勝しました。ウメハラさんも予選を通過したときはふ〜ど選手にリセットされてからでした。勢いでは押されていると思うのですが,負けた直後のメンタルで,試合に影響はないのでしょうか。

ウメハラ氏:
 変な話かもしれませんが,このセットで勝てないと判断したら勝ちにいかなくてもいいんですよ。ウィナーズはアドバンテージがあるから,情報を出さずに次のセットに行くというのも1つの作戦です。だから一方的に負けたように見えても,それが実力かどうかは分からなかったりもします。

4Gamer:
 リセットされたり,もう負けられない状況に追い詰められるとプレッシャーもかかると思うのですが,そのあたりは意識しませんか。

ウメハラ氏:
 もちろん,プレッシャーはかかるんですけど,それだけですね。どれだけ追い詰められても,そのときに自分が信じた正しい選択肢を選び続けるだけです。

4Gamer:
 ウメハラさんの昔のエピソードですと,「ストリートファイターZERO3」の世界一決定戦で,アメリカのAlex Valle選手にギリギリまで追いつめられてから逆転勝利したことがありました。

ウメハラ氏:
 あの時も状況は劣勢でしたが,攻略とキャラクター,どちらも勝っている自信があったので,ずっと勝ちにつながる材料を探していました。相手の攻めがうまくハマっていたけど,対応できれば流れは変わるとずっと思っていたんです。

4Gamer:
 今回のインタビューの最初に「逆境のほうが力が出せる」とありましたが,大会の試合中もやはり同じなんですか。

ウメハラ氏:
 あまり考えたことがなかったですけど,そうかもしれません。有利な状況だと油断してしまうタイプだと思っています(笑)。

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現在の活動目標はストII国技館大会を超える大規模イベントの開催

4Gamer:
 今年1年の大会結果を振り返ってみるとEVO Japanを制したナウマン選手を筆頭に,ひぐち選手,りゅうせい選手,カワノ選手といった若手の活躍が目立つ年だった気がします。これについてどのように考えていますか。

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ウメハラ氏:
 僕もはっきりとそうだと思います。今年の若手の活躍はまぐれではないです。シンプルに努力や練習量がベテランと逆転したんじゃないかと思います。僕やときどはめちゃくちゃ練習していますけど(笑)。これまでベテランが強かったのは,練習量が単純に若手より多かったからだと思っているので,それが逆転してしまったら若手が勝つようになるのは当たり前ですよ。
 ただこれで来年またベテランが刺激を受けて,逆襲するんじゃないかな。構図としていい感じになってきたなってワクワクしています。

4Gamer:
 そうなると若手とベテランを比較して,若手が足りていないものがなくなってきたということでしょうか。

ウメハラ氏:
 いや,そんなことはまったくなくて,やっぱりベテランのほうが経験豊富ですし,攻略も一枚上手です。でも,それを若手がひっくり返すのは面白いでしょう。来年も活躍してほしいですね。

4Gamer:
 今後若手に期待することは何かありますか。

ウメハラ氏:
 今やっていることがすごくいい。このまま続けていってほしいですね。

4Gamer:
 それでは逆にベテランに期待することはありますか。

ウメハラ氏:
 この世界は試合で勝てなくなったら終わりです。これはみんな分かっていることだと思いますが。今まではそこを若手が分かっていなかったかもしれません。若手が成長したことで,来年はみんな緊張感をもって競技シーンに取り組んでくれることに期待しています。

4Gamer:
 ゲーム以外のことも聞かせてください。ウメハラさんは今年に入ってさまざまな新しい取り組みをしてきましたが,その中の1つにアニメ「宇宙よりも遠い場所」の聖地巡礼がありました。Twitterなどで拝見しましたが,とても楽しまれているように見えましたが,いかがでしたか。

ウメハラ氏:
 初めてのことでしたが,聖地巡礼,すごく楽しかったです。大自然に囲まれてすごくリラックスできました。これは若いころにはなかった感覚ですね。昔はずっと都会にいればいいと思っていましたから(笑)。

4Gamer:
 年齢を重ねてくると新しいことに取り組んだり,挑戦したりするのがめんどうになるとは聞きますが,ウメハラさんからはそういったネガティブな面は見られません。

ウメハラ氏:
 せめて気持ちだけは若くありたいと思っています。ふだん行くことがない場所に行くのは好きなので,また時間ができたらどこかに遊びに行きたいですね。

4Gamer:
 今年を振り返って,できなかったことや反省点は何かありますか。

ウメハラ氏:
 企画配信が少なかったので,来年はそこをもっと充実させたいですね。自身の格闘ゲームへの取り組みについては,結果は付いてきましたが大会は水物ですから,来年もマイペースですべきことを続けていきます。

4Gamer:
 ウメハラさんは活動の大きな目標や夢はとくにないとインタビューでは毎回答えています。それは現在も変化していないのでしょうか。

ウメハラ氏:
 実は今年それができました。今の目標は「ストリートファイターII」の国技館大会を超える1万人が参加する大会を開催することです。

4Gamer:
 それを考え付いたきっかけは何かあるのでしょうか。

ウメハラ氏:
 配信活動を続けるなかで,格闘ゲームを盛り上げたいという気持ちが強くなってきたり,初心者講座をやってみて手応えを感じたりと,いろいろな要因から生まれたビジョンです。国技館大会を超える大会を開催できたら,新たに違う景色が見えてくるんじゃないかって,ワクワクしながら活動を続けています。

4Gamer:
 そのお話だけでも,2020年はウメハラさんにとってすごく大きな1年になったような気がしています。

ウメハラ氏:
 本当に僕もそう思います。目標も出来て,人生の節目になったんじゃないかなと。

4Gamer:
 それでは最後に,新型コロナウイルスの収束がまだまだ見えない状況ですが,2021年の抱負や目標,ファンにメッセージをお願いします。

ウメハラ氏:
 来年になっていつ新型コロナウイルスが収束するかは分かりませんが,このまま続くようであれば変わらず配信に力を入れて活動を続けていきます。先ほども言いましたが,来年はもっと企画配信などのイベントを増やしたいですね。とくに初心者に向けたものを押し出していこうと考えています。もちろん,「Capcom Cup 2020」の決勝大会に向けても練習を続けていきますので,2021年も変わらず応援してください。
 また,直近のイベントとして,新春1月3日にコロナ禍で苦境にある人たちのため,そして慈善活動を続ける団体のために12時間チャリティ配信を行うので,こちらもよろしくお願いします。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。来年の活躍にも期待しております。

――2020年12月10日収録

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