【バクの夢】






メメント森に夜が来ました。
みんな眠って夢を見ています。

その夢の世界に
嫌われもののバクが住んでいました。



バクはみんなの夢を食べます。
楽しい夢は甘くて美味しくて、
悲しい夢は苦くて美味しくないので、
バクは楽しい夢ばかりを食べていました。

バクの大好物は、みんなで遊ぶ夢と
食いしん坊の夢。



そんな楽しい夢ばかり食べるバクは、
みんなの嫌われものでした。



雨上がりの夜、バクは夢の世界で
ひとりの少女と出会いました。



少女はとっても怖い夢を
毎晩毎晩見ていました。

バクはたくさんの夢を見てきましたが、
その夢は今までに見たことのないくらい
怖くて恐ろしい夢でした。



「この恐ろしい夢はいったい
どんな味がするんだろう?」

バクは興味がわいたので
ほんの少しだけ
食べてみることにしました。

バクッと食べると、「苦い!」
「なんてひどい味だ!
もう二度とこんな怖い夢は
食べないぞ。」バクは思いました。



けれど、少女がバクに言ったのです。
「怖い夢を食べてくれてありがとう。」

バクは夢を食べて
人から"ありがとう"と
言われたのは初めてでした。



バクは次の日も少女を探しました。
少女は昨日と同じ怖い夢を見ていました。

バクは、苦いのは嫌だったけれど、
少女を怖い夢から助けたいと思い
少女の夢を全部食べました。



次の日も、その次の日も
バクは少女の夢を食べ続けました。

すると、次第に少女は怖い夢を
見なくなりました。

「もう怖い夢を見なくなったよ。
バク、ありがとう。」

バクは少女の笑顔を見ることができて
とっても嬉しい気持ちになりました。



それからというもの
バクは森のみんなの怖い夢、悲しい夢、
寂しい夢を好き嫌いせずに
食べるようになりました。

夢を食べてみんなが
「バクありがとう」
そう言ってくれることが
バクは、とても嬉しかったのです。

いつも間にかメメント森には
怖い夢、悲しい夢、寂しい夢が
なくなっていました。



ところが、今度はバクが食べられる
悲しい夢がなくなってしまい、
バクはお腹がすいてたおれそうでした。

でも、もうみんなの楽しい夢は
食べたくなかったのです。



そんなある日、
バクは毎晩夢の扉を
開けに来ている、マクという
小さなくまと出会いました。

バクはマクと友達になりました。



お腹がすいたバクに、マクは言いました。
「そうか、食べられる夢がなくて
お腹がぺこぺこなんだね。」

じゃあ僕が毎晩夢を語りにくるから
その夢を食べるといいよ。
大丈夫、僕の夢はとってもおっきいから
食べても食べても平気だよ。」



それからバクは、
毎晩三日月のぶらんこにすわって
マクのとなりで、マクの夢を聞きました。

マクの夢は、希望に満ちあふれた
とっても楽しい夢でした。



バクは幸せな気持ちで目を閉じて、
夢を見ました。

おやすみ。


作・わたなべ ゆう  絵・つよし ゆうこ

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