【くまのマク】






気がつくと僕は泳いでた。
静かで真っ赤な海を、ゆらり、るらり。

2つの優しい声が聞こえる。
きっと僕のお父さんとお母さんだ。

お母さんの声は なんだか近い。
お父さんの声は なんだか遠い。

小さな小さな
マクのいのちのきおく。



目を開けると僕は森にいた。
優しい声のお父さんとお母さんはいなかったけど、
友達がいるし さびしくない。

手を伸ばすと甘酸っぱい野苺。
口ずさむと素敵なメロディ。
見上げると緑に滲んだ木洩れ日。

美しい世界だなぁ。
お父さんとお母さんと
一緒に見て歩きたいなぁ。



その夜、マクは夢の中で
お父さんとお母さんと
一緒に散歩をしたいと思い
夢の扉を開けてみましたが
そこには誰もいませんでした。



ある日、僕は おじいちゃん木こりに出会った。
木こりは つみ木を作って プレゼントしてくれた。



「のこぎりはいい音もするのだよ」と
のこぎりの音楽も聴かせてくれた。

美しい音だなぁ。
お父さんとお母さんにも
聴かせてあげたいなぁ。



その夜、
マクは夢の中でお父さんとお母さんと一緒に
3人で木こりの音楽を聴きたいと思い
夢の扉を開けてみましたが
やっぱり そこには
お父さんも お母さんも いませんでした。



さびしい夜、
マクは森のお月様に聞きました。
「お父さんとお母さんに会いたいのですが
どこにいるか わかりますか?」

「わからないけど
いつか会えるということは わかっているよ」
「ふーん」



さびしそうに 家に帰る マクに
お月様は 一緒に家まで ついてきてくれました。



それから何年もたった ある夜、
マクは夢の中でいつもと違う扉を見つけました。



ぼーんと開けてみると、そこは不思議な世界。

時計の針が歩いている。
水はあるのかないのか わからないぐらいに透明。

木こりの音色は遠くどこまでも響いてる。

時間も 空間も 永遠の世界。

・・・不思議な世界だなぁ。



「マク」
「お父さん、お母さん」

マクは お父さんと お母さんに
やっと会えました。

あるのか ないのか わからないほど
透明の涙が一粒ぽろり。



マクはゆっくりと 時間をかけて
お父さんとお母さんに色んな話をしました。



お父さん と お母さんは
にっこり マクのお話に 耳を傾けて
ゆっくり一緒の 時間を過ごしました。



ここには 時間も、水も、
素敵な音楽も、なんでもあるから。



そして なにもないから。



作・わたなべ ゆう  絵・つよし ゆうこ

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